Tags: 遍路小屋

道の駅

In : 四国遍路について, 結願後, Posted by 田原笠山 on 2009/07/14

野宿場所を選ぶ条件としては、やはり安心感が第一だろうと思います。駅はどうでしょうか?歩きつかれて一刻も早く横になって眠りたいのだけれど、駅のベンチに18時19時という早い時間に寝袋を拡げるというのもマナー違反でしょうし、中には終電後に閉鎖する駅舎もありますから、安全だとしても熟睡できないし、十分な睡眠を取ることも難しいかもしれませんね。

ボクは浅海駅と石鎚駅のベンチで一泊、それに国分駅の自転車置場で一泊しました。安全な場所だとしても、それに小さな駅だと言っても通勤通学の人たちがいますので、そんなに落ち着けるものでもありませんし、横になるのも憚られるので、やはり窮屈に感じました。窮屈と言うか眠いのを我慢しなければならないというような苛立ちですけれど。

遍路小屋は、四方壁に囲まれているというものは少なくて、冬は寒いだろうし雨が降りこんで来る小屋もありますし、国道沿いという立地のところも多いですから、騒音ということでこれまた熟睡は難しいかもしれませんね。

道の駅も国道沿いにありますし、駐車場が広くて夜は売店が閉店していたとしても自動販売機が営業していますから、車の出入りがありますから、これまた落ち着かないですし。

そもそも野宿するのに快適さとか安心を求めるのが無理なのかもしれませんけれど、ま、それでも上記3箇所が野宿スポットベスト3となると思います。あとは公園でしょうか。公園はパターンがいろいろありすぎるので、ひと括りに出来ないし季節によっても様子が違うでしょうから、やはり次点ということになると考えていますが。

ベストは、と聞かれると、やはり道の駅でしょうか。食べる物もあるし、トイレや洗面所もありますからね。それに附設して温泉や足湯なんてのがある道の駅もありますから、歩き遍路の人たちにはオアシスみたいなものだと思います。

四国には76の道の駅があります。結構あるもんだと道の駅ガイドマップを見ながら思っています。ボクが泊まったのは「温泉の里神山」「めじかの里土佐清水」「大月」「ながお」の5泊です。

利用したのは「第九の里」「日和佐」「宍喰」「やす」「かわうその里すさき」「あぐり窪川」「ビオスおおがた」「すくも」「内子フレッシュパークからり」「今治湯ノ浦温泉」「源平の里むれ」の11施設です。

トイレを利用して洗顔したり水を補給させていただきました。洗髪をしたところもあって、道の駅がなかったらさらに苦しまなければならなかったと思います。ヘンロ小屋もそうですが、道の駅も年々増えているようで、遍路する環境も良くなっているように感じます。

環境が良くなったとしても、歩く距離が短くなるとか、納経が簡略化されるなんてことはないのですけれど。それに環境や方法と、遍路をするということとは、また別の問題だと思います。「思う」ということが大切なのでしょうね。

四国の道の駅の所在地などの詳細は四国の「道の駅」で見ることができます。

太龍寺の提灯

太龍寺の灯明



浮津の海を見ていた(20日目の1)

In : 20日目, 修行の道場, Posted by 田原笠山 on 2008/11/07

天気予報では「曇りのち雨」だたのだけれど、カーテンの隙間からは海のきらめきが転がりこんでいた。快晴。

6時30分起床。雨だと思っていたので、チェックアウトを10時前と伝えていたし、朝食も8時でお願いしていた。オバマ氏が新しい大統領になることが決まったということを朝のニュースで知った。日本シリーズ巨人・西武線は3勝2敗だそうだ。どれもが全く関係ないことのように思えた。まるで海外にいるように、そこで聞くラジオジャパンのように思えた。

ホテル海坊主から

ホテル海坊主から


7時にもう一度入浴。膝の調子は少し良くなっているように感じた。それでも起き上がる時には勇気を必要とした。そして祈った「痛みが消えてますように」。

調子は良くなっているように感じたのだけれど、それは身体から疲れが少しだけなくなっただけのようだったし、起き上がって左足に体重を乗せると思わず声が出てしまうほど、あるいは痛みは増しているのでもあった。

とりあえず7時30分にパッキング。8時に食堂へ行く。目玉焼き、シラス、かまぼこ、味噌汁、ノリ、という普通の朝食だったけれど、それがなぜだか哀しくもあった。もう少ししたら、また歩き初めなければならない、ということが哀しくさせていた。

8時30分にチェックアウト。「雨が上がって良かったですね」と送り出してくれた。雨のほうが良かった、と思った。そうすればもう一泊することが許されるように思った。

8時50分、上川口郵便局着。ATMが稼働するのを待つ。「もう一泊」出来なかったのは、財布の中身が1000円と少しだったからという理由もあった。カードが使えるとも思わなかった。

9時ちょうどに引き落とす。

わずか30分の時間、これがきつかった。歩き出すと身体の疲労がなくなった分、膝の痛みだけが集中して襲ってきた。指の腹で押していたものが、爪の先になって、次は針の先で押している、ような感じ。歩きたくなかった。その郵便局の前に座り込みたかった。

9時30分、大方遍路小屋着。荷物を下ろした。前の道路は工事中だった。その向こうの海岸は軽やかに輝いていた。それはボクにとっては、かなり残酷な風景でもあった。

国道56号線から伊の岬 晴れ

国道56号線から伊の岬 晴れ



母さん、ボクのあの黒いパンツはどこにいったのでしょうね(17日目の1)

In : 17日目, 修行の道場, Posted by 田原笠山 on 2008/11/04

たまに痛みを思い出すときがある。
もうないはずなのに、踵や膝が痛いと感じるときがある。想い出に引き寄せられるように、感覚が蘇ってくる。風や雨音はあの時と同じで、時間の中へ迷い込んでしまう。それほど強烈に記憶の中に残っている。

立目海岸にて

立目海岸にて


バス停を改造したその遍路小屋の夜は、車の音やライトで何度か起こされたのだけれど、同宿の遍路もあれから寝続けていたし、ボクも疲れていたのか、何度か起きたとしてもすぐに眠りに落ちたので、睡眠は充分取れた。そして4時30分には目がさめた。まだ夜明けまでには時間があったので、暗闇の天井を見つめていた。

5時30分起床。トイレ、と言っても、裏の空き地にて立ちション。水がないので、洗顔もせずに、まるごとソーセージとピーナッツの朝食。パッキングをして6時に出発した。出発前に初老の遍路が起きたので挨拶をした。「お先に失礼します」と言って遍路小屋を後にした。

左膝が痛かった。引きずるように歩き始めた。「これはちょっとヤバイかもなあ」と思った。鎮痛剤を服用。コーヒーが飲みたかったのだけれど、お金が五千円札と50円玉、10円玉4枚、5円玉、1円玉、合わせて100円はあったのだけれど、自販機では使えない、コンビニもない状態だった。次の三十七番札所岩本寺まで50数キロ。長い。深浦集会所の手前で「集会所に椅子がありますから、休憩して行きなさい」と勧められたので、休憩。すぐ横に自販機。

8時30分、立目海岸にて休憩。スーパー、コンビニ、雑貨屋なし…。薬が効いたのか、麻痺したのか、膝の痛みがやわらぐ。歩き始める。

9時30分、浦の内のYショップに到着。買い物。少し先の小さな島のところのトイレにて休憩。洗髪、洗顔。ついでにTシャツとパンツを洗う。この時洗ったパンツが須崎市内で行方不明になるのだけれど…。

少し気分が楽になると、膝の痛みもかなり良くなったように感じていた。それでもその痛みは疲労なんてことではなくて、なにか重大なことが起きているように感じていた。

須崎の遍路小屋で休憩。昼食。おにぎに2個を食べる。30分ほど休憩して、13時に須崎駅着。駅前の郵便局からエキスパックで単行本2冊、ラジオ、ペグを送り返す。本はまだ読んでいなかったのだけれど、膝の痛みから出来るだけ荷物を軽くしようと思ったからだ。

須崎駅でトイレ。少し休憩。13時45分発。洗ったパンツを左手に持って乾かしていた。大師通りで、ザックのサイドポケットに入れたのだけれど、その後道の駅で休憩した時にないことに気がついた。その距離1キロ…。もう引き返す力も、それにパンツだし、と思ったのだけれど、ゴミを捨てて、ごめんなさい。拾った方は不思議に思われたかもしれないですね。パンツが道路の真ん中に落ちているのだから。手に取られたとしたら、「っげ」となったかも、と想像すると、本当に申し訳ないことをした、と思っています。

14時30分、道の駅かわうその里到着。

ザック、菅笠、金剛杖

立目海岸にて



酔生夢死 イビキの夜(16日目の2)

In : 16日目, 修行の道場, Posted by 田原笠山 on 2008/11/03

塚地峠を越えて宇佐町に出た。
県道が見えたところで、峠の遍路小屋で話した女性が宇佐大橋方向へ歩いてた。彼女がどれぐらい休憩していたのか分からないけれど、ほぼ同じ時間に着いたことになる。

県道に出た。
ローソンが進行方向とは逆、高知市寄りにあった。三十六番札所青龍寺までは4キロ少しという位置だった。ボクはローソンに向かった。トイレに行きたかったし、踵の豆の治療用の絆創膏が欲しかった。峠越えで、それも雨上がりのコンディションの悪い状況での歩行で、痛みが激しくなっていた。

12時30分、ローソン土佐宇佐町店着。食料とワンタッチパッドを買う。トイレを借りて、宇佐大橋を目指した。横浪スカイライン、公園には綺麗なトイレと休憩所が数カ所あった。青龍寺に近い休憩所で少し休憩。

青龍寺の波切不動明王

青龍寺の波切不動明王


14時、青龍寺着。波切不動明王が本尊、初めて知った。波を切る、ということで海難除け、航海安全の御利益があるそうだ。

納経所でこの先の道のことを聞く。県道47号線、国民宿舎土佐、みっちゃん民宿や旭旅館に予約しているのか、と聞かれたので、「いいえ」と答える。

「この道は自動販売機もないですから、戻って23号を通ったほうが良いでしょう」ということで、少し考えたのだけれど、23号と合流する場所まで15キロ、4時間…。打ち戻ることにした。そして来た道を宇佐大橋に戻った。

15キロ、4時間ということもだけれど、踵と膝が痛かった。まだ14時30分だった。ここで無理するか、どこかで早めにねぐらを探すか、迷っていた。宇佐大橋を渡って、そして左折、少し行ったところ汐浜荘の先に、バス停だったものを遍路用に改装した小屋があった。三方壁あり。

のぞくと、初老の遍路が寝ていた。確かに雨の1日ではあったけれど、早すぎる。入っていった。「こんにちは」と言った。初老の遍路は、上半身を少し起こして「こんにちは」答えてくれた。15時30分。

「おじゃまします」と言った。
「ああ、わしはもう飲んでてな。寝ていたよ」とその遍路は言った。続けて「焼酎が安かったもんで、ついつい飲み過ぎたわ」と、そこには一升だか2リットルだかのペットボトルの焼酎があって、すでに半分ほどなくなっていた。そして何かつまみのような総菜があった。

「今日はどちらからですか」と、ボクも聞かなきゃいいのにそんな質問をした。
「ここ」
「雨でしたからね」
「おかげで飲み過ぎたよ。この先まで行ったのだけれど、忘れ物があってな。今日はここに泊まるのか」
「はい、泊まろうと思っています。よろしくお願いします」と言った。

ボクは、荷物を下ろして、そして近くの自販機に行った。数分でも荷物をそこに置いて行く不安はあった。その初老遍路だから、というわけではないのだけれど。

缶コーヒーを買って来て、早い夕食を食べた。朝、ファミリーマートで買ったおにぎり2個とおむすび唐揚げセットを食べた。16時00分。

イビキが聞こえていた。酒臭い遍路小屋だった。それでも、朝までその遍路はそこに横たわっていた。イビキが聞こえなければ、ボクはかなり不安になったかもしれない。その音が彼の鼓動のようでもあった。残った焼酎はいつ飲むのだろうか、ということも気になった。明日もここにいて、朝から飲むのだろうか、と思った。そして「おかげで飲み過ぎたよ」と同じことを言うのだろうか、と思った。

18時、まだ18時になったばかりだったのだけれど、ボクも眠った。

矢印を隠す蛾、どっち?

矢印を隠す蛾、どっち?

*清滝寺~宇佐町汐浜荘先
*宇佐遍路小屋泊

(出費)
・ファミリーマート土佐高岡店
シーチキンマヨネーズ2個 210円
手巻きおにぎり紀州梅 110円
手巻きおにぎりゴマ昆布 105円
おむすび唐揚げセット 260円
セコイヤチョコ2個 80円
薄皮つぶあん(5) 142円
バターピーナッツ 108円
アクエリアス 128円
(小計 1143円)

・ローソン土佐宇佐町店
イナババターピーナッツ 120円
まるごとソーセージ 121円
ヤマザキ スナックスティック(9) 179円
ワンタッチパッドS12枚 349円
(小計 769円)

・自販機
スポーツドリンク2本 300円
缶コーヒー 120円

合計 2332円



迷故三界城 雨(16日目の1)

In : 16日目, 修行の道場, Posted by 田原笠山 on 2008/11/03

足が痛くて何度か起きた。今までの痛みとは少し違うものだった。3時30分には起き出して、そしておにぎり辛子高菜とジャンボソーセージを食べた。なにか物音がする。雨音だと分かったのは夜が明けて外に出た時だった。食べてまた寝袋に収まった。

朝一番 清滝寺にて

朝一番 清滝寺にて


6時に目が覚めた。そして起き出した。洗顔。6時30分には参拝客が来ていた。トイレに行く。雨は止んでいたけれど、今にも降り出しそうな空模様だった。部屋の掃除をした。そして参拝。納経所に挨拶に行った。昨日の若いお坊さんがいた。天気のことを少し話した。「お気を付けて」「ありがとうございます」。

こうして2ヶ月が過ぎた今も、しっかりと記憶の中にあっては、静寂な境内に漂う線香の香りや湿った空気の匂い、そして身体の痛みが冷たい空気に押されるような感じが、まるで味覚のように蘇る。ちょうど冬の初めに、半年ぶりに、クリームシチューを食べる、そんな感じの。

歩き始めた。坂道を下って行く。霧雨。県道に出てからレインジャケットを着るかどうしようかと迷ったのだけれど、そのまま前進。ファミリーマート土佐高岡店で買い出し。8時21分というのがレシートに刻まれている時間。

小雨。ファミリーマートの駐車場でレインジャケットを着る。「今日は青龍寺までだなあ」と短めの予定にする。足、特に膝の痛みがそうさせる。歩きながらおにぎり2個(シーチキンマヨネーズと紀州梅)を食べる。おにぎりとジャンボソーセージ、ピーナッツばかり食べている。時間もうまく取れていない。急いでもいないのに、ゆっくりと食べている時間もない。休憩を取れないでいる。自己管理が出来ていない、のだろう。

少し行って降りが激しくなったのでレインパンツをはく。

10時30分に塚地峠の遍路小屋に着く。雨宿り。薄皮つぶあん(5個入り)と、セコイヤチョコの昼食。食べてばかりの朝。満足できていないのだろう。胃は満たされているのだけれど、欲は満たされていない。水でも豆腐でも胃は満たされる。

11時20分、中年の女性がやって来た。「峠を越されるのですか?」と聞いてきたので「はい、そのつもりですが、ぬかるんでいるので、国道の塚地坂トンネルを通ったほうが良いかもしれませんね」と言った。

「そうですね」とその人は言って、遍路小屋のベンチに腰を下ろした。その遍路小屋には子猫がいて誰かが飼っているようだった。キャットフードが棚にあって「餌がなくなっているようでしたら、皿に入れて下さい」という張り紙があった。子猫はボクを嫌ったのか、姿を見せなかった。

女の人に挨拶をして、ボクは峠の道を目指した。もし、その人と逢わなかったら、トンネルを通っていたかもしれないと、思った。そのほうが楽だっただろうし、そのほうが早かっただろうし…。

見栄、虚栄心、自意識……。迷故三界城。
雨は上がっていた。

清滝寺 龍の天井画

清滝寺 龍の天井画