Tags: バス停

夜遍路そして雪の夜(31日目の3)

In : 31日目, 菩提の道場, Posted by 田原笠山 on 2008/11/18

久万高原の絡みつくような闇を抜けて古岩屋荘のフロントにたどり着いた時には「部屋は空いてますか」と言いそうになった。暖かい食べ物と暖かい布団で眠りたいと思っていた。なにがその欲望を押し止めたのか。というと、それは風呂に入れる、という交換条件だったのだろうと思っている。風呂にも入れない状態だと、宿泊という欲望に負けていたのかもしれない。というか、その欲を抑える意味もボクの旅にはなかったのだけれど。現に何泊かはホテルに泊まっていたのだから…。

18時にその古岩屋荘に着いて、そのまま入湯券を購入、2階の浴場に向かった。ちょうどこの日は「温泉祭り」で入湯料が200円だった。ホテルロビーに若い遍路がひとり座っていた。浴場の前がコインランドリーになっている。そこにも若い遍路がひとりいた。時間をそこで過ごして、その後古岩屋荘入り口にある休憩所にでも寝るのだろうと思った。そういったかしこい利用の仕方をする人がいる。ボクには出来ないのだけれど…。

温泉に浸かったあとに食堂に行った。ちょうど宿泊者の夕食の時間で、遍路と思われる人たちが4組、そこにいた。ボクはうどん定食を頼んだ。800円。それを食べ終わると、ねぐらを探して出発した。19時10分。闇はさらに粘度を増して身体にまとわりついていた。山間の道は全くの暗闇だった。

19時30分、西之川のバス停に着く。四方壁、アルミサッシの窓と入り口だ。ここなら寒さをしのげると、来る時に見ていた。もしそこに先客がいたとしても、その先の久万高原ふるさと旅行村の入り口に休憩所があった。

四方壁あり、アルミサッシの窓。透明ガラスは外から丸見えなのだけれど…。

四方壁あり、アルミサッシの窓。透明ガラスは外から丸見えなのだけれど…。

ザックを下ろし、マットを出した。空気を入れて膨らませた。そしてそれを敷いた。線香を焚いた。それから寝袋を出してもぐり込んだ。寒い夜だった。何度か目が覚めた。まだ日付が変わっていなかった。そして何度か眠った。

そうして何度目かに起きた時に外を見ると、雪が降っていた。道路が白く光っていた。ボクはぼんやりとその風景を見ながら、また眠ろうとした。眠らなければと思っていた。それだけを考えた。眠ろうと。

初雪や同行二人杖と足

初雪や同行二人杖と足

*内子町川口橋~久万高原町西之川
*西之川バス停泊

(出費)
・松山生協久万高原店
ファイバーレーズン 100円
おにぎり弁当 298円
田舎巻き(巻き寿司) 350円
(小計 728円)

・国民宿舎古岩屋荘
入湯料 200円
うどん定食 800円
(小計 1000円)

・自動販売機
缶コーヒー、紅茶 240円

(合計 1968円)



バス停泊(30日目の3)

In : 30日目, 菩提の道場, Posted by 田原笠山 on 2008/11/17

13時に十夜ヶ橋を出発したボクは13時30分に「とんからかん」に着いた。そこでコーヒーを飲んで休憩。13時40分出発。JR内子線いかざき駅手前を遍路道に入る。風景が一変する。ぐいっと強引に過去へ連れ去れるような感じ。遍路道は不思議な空間だ。

内子の町はひっそりとしていた

内子の町はひっそりとしていた

池のある大きな公園に出る。そこから内子町内へと入ってゆく。内子座を少し見て、先に進んだ。15時20分、道の駅内子からり到着。高校生が販売実習をしていた。たこ焼きを買う。そしてベンチで食べる。朝、顔はコンビニで洗ったのだけれど、歯は磨いてなかったし、どうも頭が痒くてしかたなかった。道の駅の多目的トイレで洗髪をする。それから出発。15時40分、夜がそこまで来ていた。雨は上がっていた。国道379号線を上る。長岡山トンネルまでにあったいくつかのバス停は四方壁で眠るのには良さそうだったのだけれど、まだ少し時間が早かった。

長岡山トンネルを抜けたところに「お遍路無料宿」というのがある。小屋を宿泊施設として改造して提供しているのだ。17時、到着。先客あり。老人、もう70歳近いだろう老遍路がいた。少し話した。「今日は泊まるの」と訊いてきたので「あ、いえ、もう少し歩こうかと」と言った。なにか邪魔をするように思えたのだ。そして挨拶をして出た。

もう暗くなりかけていた。何箇所かバス停があったのだけれど、途中見た綺麗なバス停のことが思い出された。もうひとつ先に行けば、綺麗なバス停がある…。そう思いながら5キロほど歩いた。そしてすっかり日も暮れて山間特有の深い闇が空気に溶け込んで、まるで夜の海で泳いでいるような恐怖を感じてもいた。枯れ草を焼くにおいが懐かしかったのだけれど、遠い昔、まだ祖父や祖母が生きている頃を思い出させた。

急いだ。目的地はないのだけれど、急いだ。川口橋を過ぎた山田屋商店の先のバス停があった。冷え込むだろうから屋根のついている場所で眠りたかった。そしてそこに泊まった。寒くて何度か目が覚めた。

バス停泊

バス停泊

*西予市宇和町~内子町川口橋
*川口橋バス停泊

(出費)
・サンクス宇和れんげ店
ロング荒挽きソーセージ 116円
コーンマヨネーズ 126円
ミニタワラ弁当 295円
AGFコーヒー 140円
(小計 677円)

・ダイソー大洲店
膝サポーター 100円
ウェットタオル 100円
(小計 210円)

・十夜ヶ橋
野宿飴  350円

・かば忠飯店
日替わりランチ   600円

・道の駅内子からり
たこ焼き 350円

・自動販売機
ココア 120円
コーヒー 100円
コーヒー×2 240円
(小計 460円)

(合計 2647円)



そして転げ落ちて朝が始まった(11日目の1)

In : 11日目, 修行の道場, Posted by 田原笠山 on 2008/10/29

ベンチから転げ落ちて目がさめた。そのバス停のベンチの幅は身体の幅とほとんど同じだった。身体半分動いたら60センチ下の地面にそのまま落ちるというベッドだった。寝袋の中に入っている肢体は何の防御もできなかった。手は反応したのだけれど寝袋の中から身体を支えることは出来なかった。

5時前に落ちた。そのまま寝袋から抜け出して、ヘッドライトを点けた。その明かりで抜け殻を丸めてスタッフバックに詰め込んだ。まだ外は暗かった。ペットボトルの水を飲んだ。荷物を全てザックに入れて、それから出発した。5時30分だった。

暖かいコーヒーが飲みたかったのだけれど、11月も近い室戸、三津の海岸線の自販機はまだ冬支度をしていなかった。仕方なく冷たい缶コーヒーを買う。

6時30分、室戸海洋センターに着く。昨日買っていた十勝バターブレッドと缶コーヒーの朝食。太陽は水平線の少し下にいるらしく、その上にある空の暗さを徐々に押しやっていた。朝食後に洗顔をした。そして朝陽を待った。ちょうど鱗雲が空を覆っていて、その魚鱗を朱色に染め始めていた。空は生きていた。そして激しく動いていた。

劇的な室戸との再会だと思った。明星が口の中に入ったという弘法大師空海の、その瞬間もきっとこのような朝だったのだろうと、ボクは思った。

転げ落ちたことに感謝した。転げ落とされたのかもしれないと、ボクは思った。

室戸の朝
室戸の朝



南無大師遍照金剛(10日目の5)

In : 10日目, 修行の道場, Posted by 田原笠山 on 2008/10/28

苦しい時、辛い時、哀しい時があると「南無大師遍照金剛」と唱えるといい、と教えていただきました。金剛杖や白衣の背中にもその「南無大師遍照金剛」という御宝号が書かれています。意味は

南無大師遍照金剛

「南無」はインド語のナモ、ナマス、ナマッハを音写つまり発音の音に近い文字で作った当て字です。意味は帰命、帰依する、永遠に、心から信じお従い申しますという信仰の誓いを表します。

「大師」は偉大なる師、という意味で日本では大師号として朝廷から徳の高いお坊さまに贈られました。お大師さまは空海と言う僧名ですが弘法大師という大師号を九二一年朝廷から給わりました。日本では二十数名の高僧に贈られていますが、「大師は弘法にとられ太閤は秀吉に取られ」と言われるよう大師と言えば弘法大師、お大師さまのこと表すのです。

「遍照金剛」はお大師さまの灌頂名です。大日如来と言う仏さまの別名なのです。奈良の大仏さまは正式にはルシャナ仏ですが、その別名は大日如来さまなのです。お大師さまが中国に渡り真言密教の教えを授かったとき、最後の仕上げとして灌頂と言う儀式を受けられました。

そして

南無大師遍照金剛とお唱えになるのは弘法大師お大師さまを拝み、その後ろには大日如来さまが控えられ、また全ての神仏へとつながっているのです。御宝号の深い意味を噛み締めながら「南無」と信じるこころを開いて、「大師」お大師さまに守られて、「遍照」他人に対しても優しさ思いやりを持って「金剛」自分自身に厳しく、そういう修行の日暮らし信仰を持ち、お大師さまと同行二人の人生の道を、幸せに向かって一歩一歩精進して参りましょう。

ということなのでしょう。

三津のバス停でボクは寝袋にもぐり込んでいた。まだ19時前だった。空腹は満たされることがなかった。携帯電話の電池は全くなかった。メールの受信も出来なかった。ヘッドライトで日記をつけた。それだけの夜だった。

室戸は三度めだった。22歳の時に初めて来た。四国を一周したことがある。その時も野宿だった。御厨人窟(みくろど)、弘法大師空海が修行した場所での感動みたいなものは、それから常にあった。そういう場所が、人にはかならずあると思う。そこに立つだけで涙が流れるような場所。神社仏閣もそうだろう。日常で宗教を感じることはなくても、場所が、空間が、ボクたちの心を揺さぶるように思う。それは、久しぶりに帰る故郷のようなもの、のような…。

早く起きて朝陽を見ようと思った。歩きながら夜が明けてゆく、そして御厨人窟に辿り着くということが、正しいこと、のように感じていた。通り過ぎる車の音に驚いては目が覚める、また眠る、ということの繰り返しだった。起きているのか寝ているのか分からない夜、それも繰り返される、毎日のことだった。

三津 バス停
その泊まったバス停

*野根海岸~三津
*三津漁港、室戸よりのバス停泊

(出費)
・岬の食堂
きつねうどん 450円
巻き寿司セット 300円
(小計 750円)

・佐喜浜スーパーフェニックス
まるごとソーセージ 121円
十勝バターブレッド 126円
やぶれ饅頭 68円
カフェラテエスプレッソ 147円
白飯 120円
自家製サラダ 200円
(小計 782円)

・自販機
缶コーヒー 120円
スポーツドリンク 150円

合計 1802円