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ママチャリ遍路そして眠れぬ勝浦の夜だった(6日目の2)

In : 6日目, 発心の地, Posted by 田原笠山 on 2008/10/24

16時前に二人の自転車遍路がやってきた。

どちらともまだ20代の女性。自転車はママチャリだった。ヘンロ小屋の横に自転車を着けると、ひとりが言った「ここは泊まっても良いところですよね?」

「良いんじゃないですか」とボクは幾分不機嫌な声で言った。(そう後で後悔した)眠りかけていたせいもあった。それよりは彼女がいきなり「ここは」と切り出したことに対して不快感みたいなものだったのかもしれない。それに「え、ここに女性二人泊まるのかよ」と、ボクの平穏な時間が、そして約束されていた安心感みたいなものが、そのことによって失われるように感じたのだろう。

あの頃のボクは、自分にも余裕がなかったし、まして人に余裕を持って接することは出来ていないように感じた。それに旅の中にあっては旅人との接触が多くなる、それは遍路の中にあってもそうなのだけれど、そうすると「慣れた人」への違和感みたいなものが生じる。旅慣れたことからの自信なんてものが言葉の端端に露見する。自信がそのまま饒舌になり強い言葉になる。そしてそういう人たちへの嫌悪感が生じて、身構えてしまう。その時もそういったものを少し感じていた。それに人と話すのも面倒だった。

ふたりは荷物を降ろしだした。「やっぱり泊まるのか」と思った。ボクは寝たふりをした。少ししてふたりがヘンロ小屋の中にやってきた。小屋と言っても東屋、壁は腰のあたりまでしかないのだから、近寄れば何もかも見えてしまうのだけれど。

そしてひとりはテントを干し始めた。それが終わると、もう一度小屋のベンチに座った。「起きてますか?」とボクに聞いてきた。「はい」とボクは身体を起こした。「今日はどこから?」「神山のキャンプ場から」

ボクが2泊して3日かけた距離を自転車だと1日で着ける。そのことを話した。「自転車でお家から?」とボクは尋ねた。

「コメリで、四国のコメリで買ったんですよ。1万円ほどでした」とどちらかが言った。彼女たちは長野の山小屋で働いているらしくて、シーズンオフになった機会に四国遍路をすることにしたということだった。山女らしく、というのが適切かどうかは別として、元気だった。そして山小屋でのことを話してくれた。

「おじさんももうすぐ来るはずなんだけれどなあ」「でもまだじゃない、歩き出し」という話をしていた。ボクはそのおじさんも小屋泊まりだな、と思った。少しして彼女たちはテントを張って、食事の用意、うどんを作って食べていた。

17時ごろ、そのおじさんがやってきた。60歳を少し過ぎているだろうおじさんは「疲れた、今日も歩いた」と言って、入り口のベンチに座った。女の子たちも出てきて、少し話した。ボクは「こちらに寝てください」と奥の広い場所を勧めた。おじさんは遠慮したのだけれど、「お昼過ぎには着いていて、もう休養十分なので」と更に勧めた。結局ボクは地べたに寝たのだけれど・・・。

「そうかい」とおじさんはそこに移った。それからおじさんは夕食のパンを食べ始めた。その間に旅の様子を話していた。ボクたちは一番札所霊山寺を同じ日に出発していた。ボクのほうが少しだけ早かったようだった。そしてボクのほうが少し前を進んでいたのだ。

「栄タクシーは良かったねえ、鴨の湯では2回も風呂に入ったよ」とボクに言った。
「さかえタクシー・・・、どっかで・・・、あのプロ遍路が言ってたところかなあ」とボクは考えていた。そして「それって、なんですか?」と聞いた。

「知らないのか?」
「ええ」
「これがないとまったく困ってしまうよ」とその「四国霊場八十八ケ所歩き遍路さんの無料宿泊所一覧表」をボクに見せた。「こんなのがあるんですね」

「初日にもらったよ。」と、初日に泊まったどこかの民宿にあったのか、コピーしたということらしかった。

「すごいですね」
「他のも善根宿はあるらしいんだけれど、取りあえずこれだけあればなんとかなると思っているけれどね」
「コピーさせてもらってもいいですか」
「ああ、いいよ」
とボクは少し先にあったサンクスで2部コピーした。一部はおじさんの予備としてあげた。何度も見たのか、雨に濡れたのか、少し破れていたので。

コンビニから戻るとおじさんはシュラフの中に入って、もう寝る準備をしていた。「寝るのが一番だね」と言った。ボクはそのリストのお礼を言って「一部コピーしときましたから」と渡した。「ありがとう」と言っておじさんはそれをザックのポケットに入れた。ボクたちは出身地のことなんかを少し話した。そして寝ようとした。「じゃあ寝るか」「そうですね」

ボクは少しの間眠れなかった。シュラフの中で今日の出来事なんかを考えていた。夜中に1度トイレに行った。そしてまた少しの間眠れなかった。それから何度か目が覚めた。「部屋だったら電灯を点けて、コーヒーを淹れて、パソコンやテレビを見るんだろうなあ」なんて考えていた。

ヘンロ小屋勝浦から

*恩山寺前バス停~勝浦町ヘンロ小屋
*ヘンロ小屋泊

(出費)
・たなか屋
イカフライ定食 600円

・ローソン勝浦町沼江店
おにぎりかつお 105円
おにぎり日高昆布 110円
おにぎり紀州梅 105円
赤飯おにぎり 120円
薄皮あんぱん(3) 110円
スニッカーズ 120円
リポビタンD 153円
(小計 829円)

・自動販売機
缶コーヒー2本 240円
スポーツドリンク 150円

・コピー代 30円

合計 1849円



欲望の街で剃毛する(4日目の3)

In : 4日目, 発心の地, Posted by 田原笠山 on 2008/10/22

中鮎喰橋を渡るまでにすっかり夜になっていたのだけれど、ネオンや車のヘッドライトのヒカリでその夜は昨日の神山のものとは全く違うものになっていた。都会の夜、夜の照度が文明の度量衡なのかもしれないと思った。きっと、うまく伝わらないと思うのだけれど、それにわずか一日でカルチャーショックのようなものを感じるはずがないと思うのだろうけれど、ボクは感じていた。ちょうどアジアやアフリカから帰国した時の感覚に似ていた。

欲望の街。目の前に、手を伸ばせば、そして金さへあれば、何でも手に出来る。ボクはJR徳島線、くらもと駅のビジネスホテルに入った。そのビジネスホテル蔵宿が井戸寺から一番近いホテルだった。徳島駅前まで行けば大手チェーンホテルもあったのだけれど、もう動けなかった。18時を過ぎていた。

チェックインするとボクはまず洗濯を始めた。コインランドリーがなかったので洗面所での手洗いになった。風呂にも入った、というか、風呂に入いりながら洗濯をした。すすぎは浴槽の中でした。洗濯物をすすいでいるお湯の中にボクもいた。

それからコンビニに買い物に行った。雨が降り始めていた。ホテルに戻って遅い夕食を食べた。それからもう一度風呂に入った。今度は身体を洗った。久しぶりの風呂、久しぶりに身体を洗った。髭を剃った。そして陰毛も剃った。痒いとか毛じらみがいるとか、ということではなくて、入浴できない日々に身体を拭くのだけれど、その毛が邪魔になっていたのだ。ないほうが良いかなあ、と前から思っていた。少し恥ずかしかったのだけれど、そしてその後恥ずかしい思いをするのだけれど…。

4日ぶりの風呂だった。4日ぶりの布団だった。そして4日ぶりのテレビ、4日ぶりの電燈の下での夜、4日ぶりの無警戒な夜…。なんと4日の長かったことか、と思っていた。

雨は強く降っていた。このままだと明日も停滞かなあ、なんて考えていたし、チェックアウトはギリギリでしようか、と考えていた。筋肉が気持ちが身体中が弛緩していた。今朝の道の駅神山での出来事が遠い昔のように感じられた。

井戸寺にて

井戸寺にて

*道の駅神山~井戸寺、くらもと駅前
*ビジネスホテル蔵宿泊 5250円

*(出費)
・サンクス佐古八番町店
のり弁 385円
チャイ 105円
抹茶ラテ 105円
シーフードヌードル158円
(以上夕食)
スナックパン8P 179円
ブラックサンダー2個 62円
バターピーナッツ 105円
(小計 1099円)
・自動販売機
缶コーヒー 120円
スポーツドリンク2本 300円

合計 6769円