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33日で一周した遍路の話(29日目の4)

In : 29日目, 菩提の道場, Posted by 田原笠山 on 2008/11/16

17時少し前に西予市役所そばの郵便局に着いた。間に合った。途中卯之町の町並みをゆっくり見ることもなく、走るように通り過ぎた。走り遍路…。それから国道56号線を北上、17時30分東洋軒駐車場にあるへんろ小屋宇和に着く。もうすでに暗くなっていた。夜が日毎に早くなる気がしていた。そして寒さも増している。

香炉灰に線香、これだけ見ても美しいと思う。

香炉灰に線香、これだけ見ても美しいと思う。明石寺にて。

荷物を置いてその先のサンクスに買い物。18時、ミニタワラランチとシーフードヌードルの夕食。日曜日のレストラン東洋軒は賑やかだった。へんろ小屋のすぐ横に、前に駐車して、家族が恋人たちが食事に向かい、そして戻ってくる。幸せがそこに溢れていた。そしてボクは静かにそんな声を聞いていた。それも修行だと思った。幸せとは、日曜日の夕方に具体化する。ひとり、サザエさんを見ていたあの頃を思い出す。サザエさん症候群と言われる、期間工たちの日曜日の夕方を思い出していた。

19時になって寝袋に収まる。と、自転車で旅をしている男がやってきた。「こんばんは、誰か来たら違うところに泊まりますから」とその男は言った。へんろ小屋に遍路ではない人が泊まることは、良いことではないのだろう。男はそのことを言っていた。

「僕も遍路だったのですよ」と男は話し始めた。「33日でまわりました」と、そしてその後に痛めた足や疲れた身体を癒して、自転車を買って、もう一周回っているとのことだった。「遍路のときは名所をみることもなく観光をすることもなく、ひたすら歩きましたから」と男は言った。

昼夜歩いたそうだ。そして納経もすることなく、とにかく寺のある場所を巡ったそうだ。それも遍路なのだろう。だから男は菅笠も金剛杖も、まして納経帳も納め札も持っていなかったそうだ。

「スタンプラリー」と表現した、そしてよく表現される巡礼への懐疑から、そういった遍路のスタイルをとる人も多い。あるいはプロ遍路の多くもそういったスタイルだ。巡礼というよりも停滞、あるいは逆に、飛ばして、とにかく四国にいることを目的とする。

男は自分のスタイルでの旅、33日間がどれほど大変だったかを説いた。そして自分がこの一年旅を続けているということを説明した。40を前にしたその男と、0時前まで話をした。というか、22時過ぎたら男の話を聞くだけで、ボクは眠くてしかたなかった。すこしうんざりしていた。男の話にも興味を持てなかった。

どういうスタイルでもいいのだけれど、その善悪を説いた時点で終わりなのだ。

0時少し過ぎに寝た。雨が降っていた。少し寒い夜だった。そして長い1日だった。

国道沿いのへんろ小屋では、夜眠れない

国道沿いのへんろ小屋では、夜眠れない

*宇和島市~西予市宇和町
*へんろ小屋宇和泊

(出費)
・サークルK和霊店
ミニタワラランチ 295円
スナックパンチョコ8P 128円
(小計 423円)

・サンクス宇和れんげ店
ミニタワラランチ 295円
シーフードヌードル 168円
(小計 463円)

・自動販売機
缶コーヒー×3 360円

(合計 1246円)



同じ靴履いてた女の子・・・(29日目の1)

In : 29日目, 菩提の道場, Posted by 田原笠山 on 2008/11/16

4時に目が覚めた。トイレ、休憩所にてコーヒーを一杯頂く。雨は止んでいた。部屋に戻って、また少し寝た。5時30分起床。音を立てないように撤収する。それでも同宿だったオーストラリアのバックパッカー氏を起こしてしまう。挨拶だけして、彼はまた眠ってしまった。ボクはそのまま部屋を出てロビーにてコーヒーを飲みながら新聞を読んだ。それからホステルのご主人に挨拶をして、6時40分出発。雨上がりのしっとりとした山間の空気に包まれる、心地よかった。

道が分からなくなり2回ほど訊ねた。龍光院の猫たちと少し遊んで、合同庁舎、それから踏み切りを渡って、少し行った先を右折、国道ではなくて旧道を通るのが遍路道だ。踏切を3度渡ることになる。サークルKにて買い物。その先、北宇和島駅近くにもローソンがある。その北宇和島駅から少しずつ登り坂になっていった。雨上がりの太陽はまぶしく輝いていた。

県道57号線光満から

県道57号線光満から

8時50分、光満のひとつ手前のバス停にて休憩。そこで休憩したのは、少し前に遍路が歩いていたからだ。その距離がみょうに気になったので、そこで時間を空けて、距離を開けた。9時出発、少し雨が降り始めた。青空も見えていたのだけれど。9時30分、へんろ小屋光満到着。そこで朝食をとる。サークルKで買ったミニタワラランチを食べた。

10時00分出発。少しだけ雨は降っていた。レインジャケットを着た。JR予讃線むでん駅の手前を左折。そこでレインジャケットを脱いだ。

そこでお金がないことに気がついた。失くしたなんてことではなくて、ATMで降ろさなければならなかった。日曜日、昨日5000円ほどの出費だったので、残りが少なくなっていた。そこから西予市卯之町までの遍路道沿いにはコンビにもなさそうだった。そしてなかった。

11時少し過ぎに四十一番札所龍光寺着。参道前の食堂長命水の長命うどんを食べてみたかったけれどお金がなかった。ひとりの女性とすれ違った。宿毛の延光寺でボクが出発する時に山門で手を合わせていた人だった。その一瞬で憶えるほど印象深かった、というよりも、同じ靴を履いていたからだ。色違いだったけれど、その靴をハッキリ憶えていた。

と考えていると、ボクのほうが宿毛を早く出ているのに、ここに来て追い抜かれているのは、いったいどんだけの速度で歩いたのだろうか、なんて思った。龍光寺の裏山を通らないで、山門に戻ってから佛木寺に向かうルートで彼女は、ボクと二度目の遭遇をして去っていった。

ボクはそれから参道を通り階段を登った。そしてまた彼らに会った。

龍光寺の階段、右手の矢印の方向に行くと山道を通る遍路道

龍光寺の階段、右手の矢印の方向に行くと山道を通る遍路道



5つ星へんろ小屋あります(26日目の3)

In : 26日目, 修行の道場, Posted by 田原笠山 on 2008/11/13

宿毛サンライフで休憩していると、自転車のおじさんがやってきて「ここ小筑紫は大関琴光喜の父親の故郷で愛知やトヨタ自動車と関係がある」なんてことを話してくれた。相撲に興味がないボクも、琴光喜やその親方朝潮ぐらいは知っている。朝潮もまた高知の出身だ。土佐の海はその四股名できっと土佐の人だろうとは思ってた。豊ノ島という関取は知らなかった。この人は宿毛出身。

へんろ小屋(しんきん庵大月弘見)

民宿に隣接するへんろ小屋(しんきん庵大月弘見)泊まりにくくないかなあ…。


8時50分出発。
10時20分、扇レストランのところで休憩。違うおじさんが自転車でやってきた。そして今度はいかに宿毛が素晴らしいかを話してくれた。孤独になりがちな歩き遍路には声を掛けていただくことは何よりの接待かもしれない。10時30分出発。

10時40分、道の駅すくもで休憩。10分で着くとは思っていなかった。というかほとんど地図を見ていなかったので、位置関係が曖昧だったのだ。もくもく屋にてうどんを食べる。400円。

この道の駅にあるへんろ小屋は2階建だ。そしてオーシャンビューなので泊まってみたいと思った。薬王寺手前の木岐浜の2階建の小屋とここが「5つ星小屋だなあ」なんて考えていた。木岐では食料がなかったし、宿毛はまだ昼前だし、ついてないなあ、なんて思った。

11時10分出発。11時30分宿毛市内、100円ショップと薬局を探す。シマムラの駐車場で「このへんに100円ショップがあると聞いたのですが」と訊ねたら「ああ、すぐそこですよ」と道を教えていただいた。パルティフジ宿毛店への道だ。

しかしその「すぐそこ」が長かった。車だと5分もあれば着くだろう場所も歩くと20分30分かかってしまう。途中さらに確かめる。「パルティフジへはこの道で良いのですか?」と通りすがった人に訊いた。

12時少し前到着。隣接してあったドラッグササオカにてバンテリン液と栄養ドリンクを買う。バンテリン信奉者のボクとしては、バンテリンが癒してくれるはずだと思っていた。それからダイソーパルティフジ宿毛店に行き、膝サポーター、包帯、身体を拭くシートタオルなんてのを買った。ベンチに座って荷物を整理していたらみかんをいただいた。

12時40分出発。「パルティフジ、なんでもあり」と日記に書いている。マクドナルドもある。ハンバーガーを食べないボクも、なぜだか食べたくなった。食べなかったけれど。そして延光寺に向かった。汗ばんでいた。それほどの天気だった。

5つ星へんろ小屋(宿毛道の駅)

5つ星へんろ小屋(宿毛道の駅)



そして海の家へ(20日目の2)

In : 20日目, 修行の道場, Posted by 田原笠山 on 2008/11/07

大方の遍路小屋にいた。
ベンチに寝転がっていた。もう動かないいようと思ったし、動かない方がいいと思った。

遍路小屋に泊まる準備をしなければならなかった。11時、荷物を遍路小屋の柱にワーヤーロックして、道の駅ビオスおおがたに空荷で買い出しに行く。その日と次の日の分の食糧を確保しなければと思っていた。11時35分、道の駅着。

日替わり弁当、おにぎり弁当、餅、芋天を買う。ピーナッツなど非常食もあるからそれぐらいにしておいた。気温も上がっていたので傷みも早いだろうということも考えた。もう少し買っておけば良かったと、あとで思うのだけれど。

浮津海岸、大方遍路小屋下

浮津海岸、大方遍路小屋下


12時に遍路小屋に戻って、それから、荷物を持って海岸に降りた。国道沿いの遍路小屋、そして工事中という状況は居心地が良くなかった。ボクは海岸、そしてその先に見えたキャンプ施設の方へ行こうと、道の駅からの帰り道に考えていた。

12時20分、浮津海水浴場の大方キャンプ場着。海の家はシーズンオフでひっそりとしていた。その前のベンチに座った。少しして工事現場の人たちも弁当を持ってやって来た。そのグループとは別の夫婦、いや男女ペアの内装屋さん、あるいは、大工、左官、とにかく建築関係だろうと思ったふたりがやってきて、弁当を食べ始めた。

そしてボクも古代米おにぎりセットと搗き餅を食べた。金曜日のお昼、海の家はシーズン中のように賑やかになった。

食事が終わると、それぞれ煙草を吸ったり寝転がったりで、短いお昼休みに積極的に身体を休めていた。そして13時前になると、工事現場の人たちは仕事に戻って行った。

内装屋さんだと思った女の人がボクのほうにやって来た。そしてチョコレートとみかんを「お遍路さん、どうぞお食べ下さい」と渡してくれた。「あ、ありがとうございます」とボクは慌てて言った。忘れていた。自分が遍路だということを。

そういうとそのふたりも仕事に戻って行った。

海の家にはまたシーズンオフの寂しさが戻った。

ボクは寝袋やマットなんかを干した。それからただぼんやりと海を見ていた。

大方キャンプ場にて

大方キャンプ場にて



佐賀温泉、温泉三昧の一日(18日目の3)

In : 18日目, 修行の道場, Posted by 田原笠山 on 2008/11/05

毎日30キロとか40キロとか歩いていたのだけれど、その間何を考えていたかというと、よくは思い出せないことについて、考えていたというか、思っていたというか、それぐらいの感じだったのだろう。痛みが思考を止めたのかもしれない。なにかに酔ったような、例えばウォーキングハイみたいなもの、だったのかもしれない。

岩本寺で会った自転車遍路

岩本寺で会った自転車遍路


13時40分、岩本寺発。国道56号線からはゆっくりした登り坂。少しの勾配を身体が感じ取るようになっていた。相変わらず膝は痛かった。

15時、金上野(きんじょうの)で、朝買ったいなり寿司と赤飯おにぎりを食べる。食べると少しは気持ちが紛れた。痛みが和らぐように感じた。「高知は辛い」と日記に書いた。これから三十八番札所金剛福寺まで70数キロ、「3日? 25キロ、25キロ、25キロ」と続けて書いている。

思い出しているのだけれど、たぶん、ここが一番の難所だった。先も見えなかった。

16時30分、佐賀温泉の駐車場にあるへんろ小屋「しんきん庵」に到着。幡多信用金庫の寄贈した小屋ということだった。また改めて書くけれど「へんろ小屋プロジェクト」のひとつとして建設されたものなのだろう。その小屋はふたりが寝られるスペースがあって、真ん中には弘法大師の像が建っている。その夜はボクひとりだったのだけれど。

少しして、菅笠と金剛杖だけを残して佐賀温泉に行った。そして温泉に入った。Kさんもちょうど風呂に入っていた。「あ、いましたね」と話しかけた。
「ああ、今さっき着いたよ」
「ボクは、風呂だけですけれど」と少し話してから、Kさんは上がっていった。

30分ほどいて、それから食堂に行った。泊まり客の食事はまだのようだった。ボクは唐揚げ定食を注文した。温泉代が500円、唐揚げ定食が900円だった。ボクが食べている間にも、遍路の泊まり客がチェックインしていた。

食べ終わると、預けていた荷物を引き取って、それから遍路小屋に戻った。Kさんも含めて4~5人、佐賀温泉に泊まっているようだった。そのすぐ横の小屋で野宿する、という、なんだか格差みたいなものを考えていた。そのことがボクを少しだけだけれど、哀しくさせた。

寝袋を出した。マットの空気を入れた。と、旅館のお姉さんがやって来て「これ、お遍路さんのですよね」と、ボクが食堂に忘れたタオルを持ってきてくれた。なんだか申し訳なかった。ボクは今出した寝袋の中に収まった。まだ18時だった。今日はゆういんぐ四万十、佐賀温泉と2回も風呂に入った。2日に分けたいもんだ、と思った。

膝は相変わらず痛くて、鎮痛剤を飲んだ。それが効いたのか、30分もしないうちにボクは眠りに落ちていた。

佐賀温泉の遍路小屋

佐賀温泉の遍路小屋


後に見える活魚トラックが夜中にエンジンを停めないままだったので、排気ガス臭かった…。もう少し離れた場所に停車してくれれば……。

*大坂休憩所~佐賀温泉
*佐賀温泉、遍路小屋しんきん庵泊

(出費)
・スリーエフ窪川替坂店
チリメンコンブご飯 300円
おでん厚揚げ 80円
スナックスティック(9) 179円
おにぎり赤飯 125円
おにぎりリーゼントくん 110円
(小計 794円)

・佐賀温泉
入浴 500円
唐揚げ定食 900円
(小計 1400円)

・自販機
カップコーヒー 100円
ミルクティー 120円
スポーツドリンク 150円

合計 2564円