Category : 修行の道場

見淸淨句是菩薩位(11日目の6)

In : 11日目, 修行の道場, Posted by 田原笠山 on 2008/10/29

「見淸淨句 是菩薩位」とは「理趣経」にある偈なのだけれど、意味は「欲心を持って異性を見ることも、清浄なる菩薩の境地である」ということらしい。

理趣経 – Wikipedia

真言密教では、「自性清浄」という思想が根本にある。これは天台宗の本覚思想と対比、また同一視されるが、そもそも人間は生まれつき汚れた存在ではないというものである。『理趣経』は、この自性清浄に基づき人間の営みが本来は清浄なものであると述べているののが特徴である。

特に最初の部分である大楽(たいらく)の法門においては、「十七清浄句」といわれる17の句偈が説かれている。

この「十七清浄句」の7番目が「見淸淨句是菩薩位」。1番目は「妙適淸淨句是菩薩位」。「男女交合の妙なる恍惚は、清浄なる菩薩の境地である」ということなのだけれど、「男女交合」も「菩薩の境地」であって、性欲や性行為を含めて「人間の行動や考え、営み自体は本来は不浄なものではないと述べていることがその肝要である」ということが、「理趣経」の趣旨なのだろう。

羽根岬の夕陽を見ていたら、すっかり夜になってしまって、国道沿いを歩く白衣の遍路は車のヘッドライトに照らされて、きっと中には驚く運転手もいるのだろうと思った。小さな子供は泣き出すこともあるだろうと思った。

ドライブインなぎさの横の浜で、盛大に焚き火をしている遍路がいた。テントを張ってのキャンプだった。すぐ横には川が流れていて海に注いでいたのだけれど、その水で沐浴でもするのだろうかと、思った。まさか風呂を沸かしたりはしないだろうけれど…。

ホテルなはりは思ったより遠かった。ショップヨシダで夕食や非常食を買った。そこからすぐ、ホテルなはりはあった。久しぶりの家だったし、久しぶりの布団、風呂、暖かい部屋、欲望は全て揃えられていた。受付のお姉さんに少しだけ、欲情もした。

そのお姉さんに言った。「あの室戸の割引券はいけませんね。ここまで連れてくる」ということを言った。

その部屋は旧館の3階で、窓を開けると新館の壁が目の前にあった。取りあえず洗濯をした。風呂に入りながらの手洗いで、ほとんどのものを洗った。寝袋、カバー、テント、グランドシート、全ての物を干した。窓を開けたまま暖房を効かせた。そのほうが乾きが早いと思ったからだ。

衣類はエアコンの吹き出し口の所に吊した。そうしておいて、下の階の大浴場へ向かった。洗濯機も乾燥機もあったのだけれど、「もういいや」と思い、風呂につかった。落ち着いたら、体中が痛くなった。

部屋に戻って、夕食を食べた。おにぎりセット、カップ焼きそば、卵焼き、あんパン、かなりの量だったけれど、平らげた。それでも何か物足りない気分だった。もうその空腹感は満たされないようでもあった。神経がどこか壊れていて、欲求は満たされることがないようにも考えていた。食べても、寝ても、その欲望の器は、底が抜けていて、そこから漏れているようにも感じていた。

充電した。携帯もカメラも。それからベッドに入った。すぐに眠くなった。何度も目がさめた。何度も目がさめてその場所を確かめた。そしてその間に夢を見ていた。夢精したのはその夜だった。

国道55号線

*三津~奈半利
*ホテルなはり泊

(出費)
・Yショップ室戸店
まるごとソーセージ 121円
手巻きおにぎりツナマヨ 116円
手巻きおにぎり梅 105円
手巻きおにぎり 四万十のり 105円
ポリッピー 100円
ピーナッツチョコ 104円
乾電池単三×4 263円
(小計 1019円)

・ショップヨシダ
おにぎりセット 200円
卵焼き 150円
カップ焼きそば 178円
パン 100円
あんパン 100円
ピーナッツ 2個 210円
(小計 938円)

・自販機
缶コーヒー×2 240円
スポーツドリンク 150円

・ホテルなはり 3500円
朝食バイキング350円

合計 6197円



托鉢遍路の孤独(12日目の1)

In : 12日目, 修行の道場, Posted by 田原笠山 on 2008/10/30

神峯寺への山道にて
神峯寺への道で

6時30分に起床。
パンツの洗濯で朝が始まる。ついでにバスタブにお湯を張って、入浴。なんだか妙な疲れ。緊張が少し緩んでいたの身体が怠い。重く感じる。このままもう一泊したいという気持ちになる。3500円で幸せが買える。安いものかもしれない、と考えていた。

パッキングしているとMから電話。終わるとホッチキスに電話。8時30分に食堂に行って朝食。おにぎり4個、味噌汁2杯、パン2個、コーヒー2杯、ゆずジュース2杯、で満腹状態。いよいよ動くのが面倒になる。このまま夜まで、という気持ちになる。

その気持ちを振り切ってチェックアウト。9時過ぎにホテルを出発。秋晴れの良い天気だった。毎日、これぐらいゆっくり出来たら「楽」かもしれないなあ、なんて思っていたのだけれど、そうすると、50日では回りきれないで、60日とか70日なんてかかってしまうのだろうね、なんて思っていた。

Yショップ奈半利おかもと酒店で買い物。27番札所神峯寺へは山道になるので、取りあえず昼食用の食料を調達。奈半利や安田の街並は落ち着いていて、好きな道だった。その安田を過ぎ右折して、土佐くろしお鉄道、ごめん・なはり線の高架橋を下ると神峯寺への登りになる。標高差400メートルを一気に登る道路。大型バスが通らないので、ツアーでのお遍路さんたちは、マイクロバスのタクシーに乗り換えての参拝になるとのことだった。

その登りになる集落にひとりの遍路姿の男ががいた。

「あの~、すみませんけど、水をいただけますか~」と、とても元気な声で玄関から家の中へ声をかけていた。僧なのか、プロ遍路なのか、行乞の托鉢僧なのか、あるいはボクと同じ歩き遍路なのか…。その姿には「慣れ」が表出していた。孤高さ、というものよりは、なにか狡猾さみたいな目つきに、ボクは何か嫌な感じがした。

いつも、なぜか、そういう人たちをボクは醒めた目で見ていた。修行なのかもしれないけれど、多くはその慣れているという言動に対して嫌悪感みたいなものを持っていた。四国という場所で托鉢をする、ということの「手軽さ」を感じていたし、今もそれは払拭できないでいる。

生への執着や欲への渇望などは、あって当たり前だと思う。前回のエントリーにも書いた「理趣経」に見られる人間の行動や思考を清浄なものだとする教えも間違っていないと思う。とはいえ、プロ遍路や托鉢遍路には、なにか純粋さみたいなものが、どうしてかは分からないけれど、感じられない人がほとんどだった。

「お四国さん」と遍路を呼ぶ人たちもいた。「偽遍路」や「乞食遍路」ということを話す人もいた。長い歴史の中ではいろいろなことが遍路道で起きたのだろう。ボクにとっては初めての道だし、初めての経験だったのだけれど、遍路道沿道の人々にとっては、いつもの風景なのだろうし、もう何百年も前から繰り返されている日常なのだろうと思った。

その風景は旅人にとっては「綺麗なもの」なのかもしれないけれど、例えば砂漠に住む人々のように、例えば極寒の地の人々のように、「地獄だよ」と感じる人も、感じる時も、あるのだろうと思った。

山の神
これも神峯寺への山道に飾っていた(?)のだけれど、きっと遍路へのメッセージなのかもしれないと、思った。てか、驚くよね。



神峯寺そして安芸市へ(12日目の2)

In : 12日目, 修行の道場, Posted by 田原笠山 on 2008/10/30

11時50分、神峯寺まで1.5キロメートルのところで休憩した。車道だけを辿って歩いて行くほうが「楽」ではないかと思ったのだけれど、遍路道はその車道をショートカットして直線で山門に続いていた。それは地図でも分かったので、歩きやすさやアスファルトの道路よりは急登の山道を選んでしまう。下りは車道だけを使った。

へんろみち保存協会の「解説編」には「この札所に至る遍路道は『真っ縦』と呼ばれ勾配四十五度一・三キロの急坂で、土佐の難所ならぬ関所で知られている。」と記載されている。大型バスが通行できないのは、道幅ではなくて、その急坂のためなのかもしれない。

12時30分頃神峯寺着。標高が高い分、秋風が冷たく感じた。展望塔まで行くと公園があって、そこでテント張って夕陽や朝陽を見ると綺麗かなあ、なんて考えていた。

納経を済ませて納経所に行く。みかんをいただく。横のベンチに座って、オニギリとサンドイッチの昼食。遅い一日の始まりだったのだけれど、急登に疲れていた。少し長めの休憩。13時30分出発。来た道を戻る。

下り終えた辺りでKさんと再会。宍喰以来、と言っても2日ぶり。朝早くから夜まで歩いた2日間だったので、Kさんを追い越して、そして10時前のチェックアウトだったのだけれど、追い抜かれることなく、神峯寺を打ち終えたことになったようだ。

なんだか懐かしい気持ちがしたし、なんだか面倒臭い感じもした。遠くからKさんであることが分かった。ボクの方が先に手を振った。「早いね」とKさんが言った。

Kさんは空荷だった。その日は55号線の民宿に宿泊するとのことで、荷物を預けての参拝だった。「今日はどこまで?」と聞かれたので「安芸市内あたりと考えているのですけど」と答えた。

「登りはきつかった?」
「ええ、ま、でも、車道ですから。どこに泊まるのですか?」
「その先の民宿にね。」
なんて会話を少しして「じゃあまた」と別れた。14時あたりだった。あと3時間、12キロ歩けるとして安芸市内を抜けられるかなあ、なんて考えて地図を見た。

安田から安芸伊尾木までは、あの室戸までの10キロの道のような風景だろうと、地図を見ながら思った。ただ鉄道があり駅があって、そのことがボクを安心させた。天候次第では駅泊も出来る、と思っていた。殺風景な地図の風景は、それだけで距離を、実際よりも短く感じさせた。

神峯寺にて
神峯寺にて

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まるごとソーセージ(12日目の3)

In : 12日目, 修行の道場, Posted by 田原笠山 on 2008/10/30

ほんと、まるごとソーセージ、よく食べたなあ…。カロリー摂取(341カロリー)だけではなくて、菓子パン(あんパンとかコッペパンジャムマーガリンなんかの)よりは、健康によさげな感じがして食べた。ジャンボソーセージもよく食べた。

山崎製パン
山崎製パン | イチオシ商品

表を見ると、ナトリウムが多いだけ、なことに、少なからず後悔していたりするのだけれど、お菓子というよりも食事ということを考えると、やっぱりまるごとソーセージかなあ…。

国道55号線は海岸線沿いにボクを安芸市まで運んでいった。大山岬も室戸と同じようにボクの記憶の中に正確に収まっていた。上の道を通らずに下の道を取った。そして地蔵堂にて参拝、少し休憩した。

道の駅大山の先の道路が工事中で、防波堤道路への進入路を通り過ぎてしまった。「通り過ぎた」ということを気づいたのは線路を渡って、そして線路が左手に見えたからだった。途中で防波堤道路へ線路を渡って行った。夜がまた近づいていた。

いおき駅のあたりで、防波堤道路から国道に合流する。その先にローソン安芸伊尾木店があった。買い物をする。ねぐらを探す時間になっていた。夕食はそこで食べることになるので、助六とおにぎり、そしてやっぱりまるごとソーセージだった。

安芸市内を通って、染井町、養老乃瀧のところから海岸線に向かった。地図には市営球場、阪神タイガースのキャンプ場として有名なのだけれど、その辺りに公園があって、トイレや休憩小屋が記載されていた。その少し手前の海岸、干魚工場のある浜に辿り着いた。もうそこで眠ろうと思った。

助六とおにぎりカツオ、デカウマソーセージの夕食を食べた。行動時間は短かったのだけれど、疲れていた。そのまま素泊まり(テントを張らずにマットと寝袋だけで)していたのだけれど、風が強い日で寒くなったので20時過ぎにテントを張った。強風がテントを揺らす。

夜中、何度も頬にテントの布が触れる。何か動物がテントの上にいる、半分夢の中で思っていた。振り払っても振り払っても逃げない。「こら~」と叫んだ。その声で目がさめた。風がテントを揺らしていた。軽いテントはしなるだけしなって、揺れるだけ揺れていた。ナイロン袋に入れられた金魚すくいの金魚みたいなものだと、思った。

何度も目が覚めた。何しているんだろう、とも思った。

安芸の海岸
安芸市の海岸にて、大山岬、そして遠く室戸岬。

*奈半利~安芸市球場前手前
*安芸市球場前手前の海岸泊

(出費)
・Yショップ奈半利 おかもと酒店
ポカリスエット 147円
おにぎり昆布 105円
一口サンド 230円
飴 100円
(小計 582円)

・ローソン安芸伊尾木店
おにぎりカツオ 105円
助六 398円
デマウマソーセージ 113円
まるごとソーセージ 121円
(小計 737円)

・自販機
缶コーヒー×2 240円
スポーツドリンク 150円

合計 1709円



野生の朝(13日目の1)

In : 13日目, 修行の道場, Posted by 田原笠山 on 2008/10/31

漁師町の朝は早い…。
というか、公園や海岸など寝られる場所の朝は、犬の散歩(なのか人の散歩なのか)の人たちで、一日が始まる。その気配や声で目ざめる時もあった。あるいは深夜、え、こんな時間になんていう1時とか2時に、犬の散歩をする人たちもいて、驚かされる。それはきっと散歩の人たちも同じで、驚くこともあるのだうと思った。「え、こんなところに人が…」と。

安芸市の海岸の朝も犬の声で目が覚めた。しばらくすると、うっすらと水平線が朱色に染まり始めた。6時前起床。テントをたたむ。海岸での宿営は片付けるのが大変だ。結露で濡れた部分に砂が付く。グランドシートは海岸の湿気で濡れている。そこに砂が付着する。小さくたたみ込むので湿気たまま次の出番を待つことになる。重量も1割増しといった感じがした。

6時30分出発。
ローソン安芸津久茂店で朝食を買う。この日の朝食はおにぎり3個。安芸市営球場が見える。少し戻って近くの公衆トイレで洗顔、洗髪もした。ついでにTシャツも洗濯した。多目的トイレに入って行ったのだけれど、どうも落ち着かない。後ろめたさはいつもあった。それでも身体を拭いたりするのには、あの空間は最適だった。

途中、あかの駅とわじき駅の間、わじき駅の先だっただろうか、琴ヶ浜では、地引き網漁をしばらく見ていた。鳶がその漁の分け前に求めて群がっていた。その奥の松林はきっと彼らのサンクチュアリになっているのだろう、100羽ほどのが浜にいた。鷲敷、あれは鷲だったのだろうか、いや、あれだけの鷲がいるはずもなく、鳶だったのだろう。鳶敷…。

海水健康プールの所でもう一度休憩。プールに来た3人組の女性と挨拶を交わす。太陽は隠れてしまっていた。嫌な感じの雲が空を覆っていた。雨の予感がした。

途中、西分駅の所に遍路小屋あり。「宿泊可、食事は西分駅の店で、トイレは駅にあります」という看板あり。「ありがたいね」なんて思って通り過ぎる。国道に出てサンクス芸西店にて救急絆創膏を買う。踵の豆が大きくなっていたんだ。ついでにスニッカーズも買う。駐車場で絆創膏を貼り直して、スニッカーズを食べる。痛い。

歩いていた。
少し行ったところにある(地図には記載されていないのだけれど)介護施設には接待所があって、自動の給湯器があって。ほうじ茶をいただく。このあたりには接待所が多い。そう言えば、サンクス芸西店の店員さんも親切だった。とても些細なことなのだけれど、例えばひと言が、「がんばって下さいね」というひと言が、胸にしみる。時には涙になった。

琴ヶ浜の接待所
琴ヶ浜の接待所。一瞬驚いたよ。