Category : 16日目

迷故三界城 雨(16日目の1)

In : 16日目, 修行の道場, Posted by 田原笠山 on 2008/11/03

足が痛くて何度か起きた。今までの痛みとは少し違うものだった。3時30分には起き出して、そしておにぎり辛子高菜とジャンボソーセージを食べた。なにか物音がする。雨音だと分かったのは夜が明けて外に出た時だった。食べてまた寝袋に収まった。

朝一番 清滝寺にて

朝一番 清滝寺にて


6時に目が覚めた。そして起き出した。洗顔。6時30分には参拝客が来ていた。トイレに行く。雨は止んでいたけれど、今にも降り出しそうな空模様だった。部屋の掃除をした。そして参拝。納経所に挨拶に行った。昨日の若いお坊さんがいた。天気のことを少し話した。「お気を付けて」「ありがとうございます」。

こうして2ヶ月が過ぎた今も、しっかりと記憶の中にあっては、静寂な境内に漂う線香の香りや湿った空気の匂い、そして身体の痛みが冷たい空気に押されるような感じが、まるで味覚のように蘇る。ちょうど冬の初めに、半年ぶりに、クリームシチューを食べる、そんな感じの。

歩き始めた。坂道を下って行く。霧雨。県道に出てからレインジャケットを着るかどうしようかと迷ったのだけれど、そのまま前進。ファミリーマート土佐高岡店で買い出し。8時21分というのがレシートに刻まれている時間。

小雨。ファミリーマートの駐車場でレインジャケットを着る。「今日は青龍寺までだなあ」と短めの予定にする。足、特に膝の痛みがそうさせる。歩きながらおにぎり2個(シーチキンマヨネーズと紀州梅)を食べる。おにぎりとジャンボソーセージ、ピーナッツばかり食べている。時間もうまく取れていない。急いでもいないのに、ゆっくりと食べている時間もない。休憩を取れないでいる。自己管理が出来ていない、のだろう。

少し行って降りが激しくなったのでレインパンツをはく。

10時30分に塚地峠の遍路小屋に着く。雨宿り。薄皮つぶあん(5個入り)と、セコイヤチョコの昼食。食べてばかりの朝。満足できていないのだろう。胃は満たされているのだけれど、欲は満たされていない。水でも豆腐でも胃は満たされる。

11時20分、中年の女性がやって来た。「峠を越されるのですか?」と聞いてきたので「はい、そのつもりですが、ぬかるんでいるので、国道の塚地坂トンネルを通ったほうが良いかもしれませんね」と言った。

「そうですね」とその人は言って、遍路小屋のベンチに腰を下ろした。その遍路小屋には子猫がいて誰かが飼っているようだった。キャットフードが棚にあって「餌がなくなっているようでしたら、皿に入れて下さい」という張り紙があった。子猫はボクを嫌ったのか、姿を見せなかった。

女の人に挨拶をして、ボクは峠の道を目指した。もし、その人と逢わなかったら、トンネルを通っていたかもしれないと、思った。そのほうが楽だっただろうし、そのほうが早かっただろうし…。

見栄、虚栄心、自意識……。迷故三界城。
雨は上がっていた。

清滝寺 龍の天井画

清滝寺 龍の天井画



酔生夢死 イビキの夜(16日目の2)

In : 16日目, 修行の道場, Posted by 田原笠山 on 2008/11/03

塚地峠を越えて宇佐町に出た。
県道が見えたところで、峠の遍路小屋で話した女性が宇佐大橋方向へ歩いてた。彼女がどれぐらい休憩していたのか分からないけれど、ほぼ同じ時間に着いたことになる。

県道に出た。
ローソンが進行方向とは逆、高知市寄りにあった。三十六番札所青龍寺までは4キロ少しという位置だった。ボクはローソンに向かった。トイレに行きたかったし、踵の豆の治療用の絆創膏が欲しかった。峠越えで、それも雨上がりのコンディションの悪い状況での歩行で、痛みが激しくなっていた。

12時30分、ローソン土佐宇佐町店着。食料とワンタッチパッドを買う。トイレを借りて、宇佐大橋を目指した。横浪スカイライン、公園には綺麗なトイレと休憩所が数カ所あった。青龍寺に近い休憩所で少し休憩。

青龍寺の波切不動明王

青龍寺の波切不動明王


14時、青龍寺着。波切不動明王が本尊、初めて知った。波を切る、ということで海難除け、航海安全の御利益があるそうだ。

納経所でこの先の道のことを聞く。県道47号線、国民宿舎土佐、みっちゃん民宿や旭旅館に予約しているのか、と聞かれたので、「いいえ」と答える。

「この道は自動販売機もないですから、戻って23号を通ったほうが良いでしょう」ということで、少し考えたのだけれど、23号と合流する場所まで15キロ、4時間…。打ち戻ることにした。そして来た道を宇佐大橋に戻った。

15キロ、4時間ということもだけれど、踵と膝が痛かった。まだ14時30分だった。ここで無理するか、どこかで早めにねぐらを探すか、迷っていた。宇佐大橋を渡って、そして左折、少し行ったところ汐浜荘の先に、バス停だったものを遍路用に改装した小屋があった。三方壁あり。

のぞくと、初老の遍路が寝ていた。確かに雨の1日ではあったけれど、早すぎる。入っていった。「こんにちは」と言った。初老の遍路は、上半身を少し起こして「こんにちは」答えてくれた。15時30分。

「おじゃまします」と言った。
「ああ、わしはもう飲んでてな。寝ていたよ」とその遍路は言った。続けて「焼酎が安かったもんで、ついつい飲み過ぎたわ」と、そこには一升だか2リットルだかのペットボトルの焼酎があって、すでに半分ほどなくなっていた。そして何かつまみのような総菜があった。

「今日はどちらからですか」と、ボクも聞かなきゃいいのにそんな質問をした。
「ここ」
「雨でしたからね」
「おかげで飲み過ぎたよ。この先まで行ったのだけれど、忘れ物があってな。今日はここに泊まるのか」
「はい、泊まろうと思っています。よろしくお願いします」と言った。

ボクは、荷物を下ろして、そして近くの自販機に行った。数分でも荷物をそこに置いて行く不安はあった。その初老遍路だから、というわけではないのだけれど。

缶コーヒーを買って来て、早い夕食を食べた。朝、ファミリーマートで買ったおにぎり2個とおむすび唐揚げセットを食べた。16時00分。

イビキが聞こえていた。酒臭い遍路小屋だった。それでも、朝までその遍路はそこに横たわっていた。イビキが聞こえなければ、ボクはかなり不安になったかもしれない。その音が彼の鼓動のようでもあった。残った焼酎はいつ飲むのだろうか、ということも気になった。明日もここにいて、朝から飲むのだろうか、と思った。そして「おかげで飲み過ぎたよ」と同じことを言うのだろうか、と思った。

18時、まだ18時になったばかりだったのだけれど、ボクも眠った。

矢印を隠す蛾、どっち?

矢印を隠す蛾、どっち?

*清滝寺~宇佐町汐浜荘先
*宇佐遍路小屋泊

(出費)
・ファミリーマート土佐高岡店
シーチキンマヨネーズ2個 210円
手巻きおにぎり紀州梅 110円
手巻きおにぎりゴマ昆布 105円
おむすび唐揚げセット 260円
セコイヤチョコ2個 80円
薄皮つぶあん(5) 142円
バターピーナッツ 108円
アクエリアス 128円
(小計 1143円)

・ローソン土佐宇佐町店
イナババターピーナッツ 120円
まるごとソーセージ 121円
ヤマザキ スナックスティック(9) 179円
ワンタッチパッドS12枚 349円
(小計 769円)

・自販機
スポーツドリンク2本 300円
缶コーヒー 120円

合計 2332円