Category : 34日目

ファミレス遍路(34日目の1)

In : 34日目, 菩提の道場, Posted by 田原笠山 on 2008/11/21

エコノミスト氏との不思議な夜を過ごし、寝不足のまま浅海駅を6時15分に出発したボクは国道196号線を海沿いの道路を歩いていた。少し行くと菊間町に入る。菊間瓦で有名な町だ。製瓦会社が国道沿いの軒を連ねる。お接待所もあってその有名な陶製のカエルを「どうぞお持ち帰りください」と置いていた。「無事帰る」に引っかけたお守りだ。

菊間の鬼瓦

菊間の鬼瓦

ボクは何個かいただいて、それをザックにしまいこんだ。少し休憩してからまた歩き始めた。天気が悪くなっていった。雲が重く立ち込めていた。雨の予感。気温も下がっていた。

お腹が痛かった。寝不足なのか冷やしたからか、トイレに行きたかった。巡礼中は便秘気味だったのだけれど、それは野宿にとってはありがたいことだった。トイレに心配をしなくていい分ねぐらの条件が少なくなる。

菊間町市街地を抜ける。途中番外霊場遍照院があったのだけれど、多くの人が掃除をしていたので「トイレ」と言い難かった。駅は少し道から外れた場所にあったで、そのまま歩いた。その先旧道入り口ところに公園があったのでそこに寄った。雨も少し降り出していた。8時20分。

8時35分、レインジャケットを着て出発。旧道を通り太陽石油菊間製油所のところを196号線に戻る。伊予亀岡駅をすぎて亀岡郵便局のATMで預金を下ろす。今回は早目に下ろした。それからまた歩き始めた。途中「延命寺に行くんだったら乗せていくよ」という運転手さんから声をかけていただいた。「ありがとうございます、歩いて回っているもので」とお断りした。そういうことが何度かあった。

10時00分、星の浦海浜公園到着。雨は止んでいたけれど風が強かった。大きな公園だった。整備されていて野宿には不向きだろうと思った。整備されていて綺麗すぎると、逆に野宿しにくいものだと考えていた。10時15分、それから旧道を通って延命寺に向かった。その時は晴れていた。

菊間町の臍(へそ)島

菊間町の臍(へそ)島

よく分からない天気だった。レインジャケットを着たり脱いだりという日だった。予讃線の踏切を渡り、しばらくすると196号線と再度交わる。と、Joyfllが見えた。10時30分、昼食には少し早かったけれど、朝食もまだだった。寝不足はそのまま腹痛にも空腹にも繋がっていた。ボクはそのファミレスに入った。そして日替ランチと味噌汁、ドリンクバーを注文した。ファミレス遍路だった。

閑散とした店内で、ボクは携帯の充電を考えていた。もう電池がなかった。昨日の長電話で残量が0になっていた。Joyfullの店員に頼んだら「どうぞ」と言ってくれるだろうか、いや言うこと自体間違っているのではないか、なんてことを考えていた。考えていたのだけれど、そのまま食事が終わると店を後にした。11時15分だった。延命寺まで3キロ弱のところだった。



金剛杖割れる(34日目の2)

In : 34日目, 菩提の道場, Posted by 田原笠山 on 2008/11/21

Joyfull今治大西店を11時15分に出発したボクは、そのまま196号線を延光寺に向かった。途中ローソン今治延喜店にて単三アルカリ電池を買う。携帯電話への充電用にだ。そして充電をしながらMに電話をした。「今治市内のビジネスホテルを調べてメールして」と話した。すぐに「電池がないから」と言って切った。歩きながらメールを待った。

すぐに「ポートサイド今治、4400円朝食付き、14時チェックイン可」というメールが届いた。他に今治駅前の旅館の候補もあった。返信した「ポートサイドで予約して」と。

今治市内に入って、延命寺、南光坊、泰山寺そして栄福寺まで行けるようにも思っていた。まだ12時前だった。それでもなぜか「ホテルに泊まりたい」と思っていた。ここ数日間の寒さや寝不足がボディーブローのように効いていた。そして洗濯や風呂ということが頭から離れられなくなった。あの久万から風呂に入ってなかった。寒さは身体を拭くことや頭を洗うことを遠ざけていた。それに雨が降りそうだった。雨がねぐらを奪う。

Mから再度「予約した」という連絡が入った。そして住所と電話番号が書いていた。そのことが身体を軽くした。

12時00分、五十四番札所延命寺到着。納経を終えたところで雨が降り始めた。小降りだったのでレインジャケットを着て出発した。12時30分。少し焦っていた。「南光坊からホテルに行こう」という予定を立てていた。4キロ少し。ちょうど14時のチェックインの時間だ。早く着くことにはなんら問題ないと考えていた。

少し歩くと雨は本降りになった。ボクは急いだ。西瀬戸自動車道(しまなみ海道)の高架下までたどり着いた。豪雨。横殴りの雨が降りかかってくる。道路が一気に川になる。それほどの雨が降り続いた。10分間、集中豪雨だった。

今治市瀬戸内しまなみ海道高架下、雨降り止まず

今治市瀬戸内しまなみ海道高架下、雨降り止まず

少し弱まったところで出発した。待てない。13時には止んだ雨を待てなかった。なぜだか無性に腹が立ってきた。そして金剛杖を地面に打ちつけなが足早に坂を登った。「なんだ、この雨は」と叫んだ。そして打ち付けた。「大師、助けろ」と叫んだ。

金剛杖が割れた。その先が10センチほど割れたのだ。それほど強く打ち付けていた。「なんの罰だ」と叫んだ。そうすることで雨が止むはずはなかったのだけれど…。

雨の大谷霊園を抜けて姫坂神社、今治北高に出た。その時には青空が出ていた。わずか30分を待てない自分を呪った。

ところどころに雨雲が点在していた。その空からは太陽が地上を照らしていた。走るように歩いたので、そしてレインジャケットを着ていたので汗ばんでいた。県道38号線、商店街のところでジャケットを脱ぐ。南光坊はもうそこだった。

南光坊山門四天王像(持国天)

南光坊山門四天王像(持国天)


南光坊の山門は一般的な仁王像がある山門ではなくて、四天王が守護する山門で、外側内側に四天王(持国天・増長天・広目天・多聞天)を配置している。



納経帳の値段(34日目の3)

In : 34日目, 菩提の道場, Posted by 田原笠山 on 2008/11/21

13時30分に五十五番札所南光坊に着いた。雨はすっかり上がっていたのだけれど、雨雲が散らばっていた。延命寺からの1時間が長く感じられた。雨のせいではなくて、気持ちのせいだったのだけれど。

本堂、大師堂と納経が終わり納経所に行った。そうするとお寺の人が「あ、やっぱり名前を書いてないね」とボクの納経帳を見て言った。それから「失くしたりしたときに書いていたほうが良いですよ」と、そして「これから先は特に注意したほうがいいですよ」と教えてくれた。そういう話は聞いた事があった。要するに五十五もの札所の墨書・朱印を押した納経帳を狙う人がいるというとこだ。ネットオークションでも売買されていたりもする。また代理遍路、一箇所いくらで四国遍路を職業としてやっている人もいる。

値段が付くのだ。それもかなり高額で。
札所一か所につき300円で墨書・朱印押印していただくので、八十八か所だと26400円かかる。プラス納経帳自体が1500円以上なので、28000円が最低でもかかっているので出品するほうはそれ以上の金額になる。(もちろんどういった経路で入手したかにもよるだろうけれど)

中には10万円という出品価格もある。確かに納経帳はそんな値段ではないと思う。車で回ったとしても1週間、それだけの日数が必要なのだから。まして歩きで回って40日50日かかったとしたら10万円でも安いと思う。

オークションに出品されている納経帳。10万円の最低落札価格。

オークションに出品されている納経帳。10万円の最低落札価格。

そういうニーズがあるのだから、なんともボクには言えない。身体が動かなくて、それでもその聖なるものを欲しいという人がいるとしたら、それはそれでお接待なのだろうから。その人のことを念じながら歩いたとしたら、それはそれで価値あるものだろうから、代理遍路も悪いことではないと思う。

それが犯罪に繋がらなければの話なのだけれど。
納経帳を狙う人がいるという噂は何度か聞いた事があった。名前を書くということは分からなかった。南光坊のお寺の人はそのことを言っているのだ。そして「私でよければ書きましょうか」と言った。「ええ、お願いします」と言って「ただ、ボクの名前ではなくて母の名前を書いてください」と付け加えた。

「お母さんの代りにお参りなされているのですか」
「ええ、それもありますけれど、納経帳は母への贈り物にしようと考えていましたから」と言った。お寺の人は「為」という文字を入れて母の名前を書いてくれた。そして「お母さんもお喜びになりますよ」と言ってくれた。「ありがとうございます」とボクは言った。

それからボクはポートサイド今治への道を訊ねた。詳しく教えていただいた。
救われた気持ちがした。それからボクは礼を言って、南光坊を後にした。雨のにおいがした。枯葉のにおいも重なった。海のにおいも近かった。14時だった。

南光坊山門四天王像

南光坊山門四天王像



擬死再生(34日目の4)

In : 34日目, 菩提の道場, Posted by 田原笠山 on 2008/11/21

14時に南光坊を出発したボクは今治市街地を歩いて予約していたビジネスホテルの近くのローソン今治中浜店に寄った。10時30分にJoyfullで食べてはいたけれど空腹だった。それにホテルで飲むコーヒーも買いたかった。ローソンを出てそのビジネスホテルはすぐに分かった。辰口公園の隣だった。

チェックインすると部屋に行きすぐに湯船にお湯を張った。そして携帯、デジカメの充電をした。洗濯物を出してそのまま床に広げた。それからお湯に浸かった。全てを洗うとシャワーを浴びて身体を拭く。それから着替えて洗濯物を持って同じ階にあるコインランドリーに行った。

足の踏み場もなくなる部屋

足の踏み場もなくなる部屋

洗濯が終わるまでテントや寝袋、カバーやマット、全てのものをスタフバックから出して床に広げた。テントのフレームを洗濯竿にしてテントやシュラフカバーを干した。暖房を入れた。洗濯が終わることを見計らってランドリーに行く。洗濯物干しがランドリーにあったので借りて、部屋の中で干した。

暖房を入れた部屋は洗濯物で湿度が上がった。ガラスが曇った。外を見ると雨が降り出していた。1日へんな天気だった。

それからボクは助六と鶏南蛮そばを食べた。夕方になっていた。ほんとうならば今頃はねぐら探しの時間だと思った。

全てが終わってから少し寝た。次に起きた時には夜になっていた。また目を閉じた。そして眠った。その繰り返しだった。夜中にトイレに行った。窓の下、辰口公園があった。そことここの違いは明確だった。昨日まではそこに眠っていたのだから。そして明日もきっとそこに眠るのだろうと思ったら、なんだか不思議な気持ちになった。

それは擬死再生のようでもあった。白衣という死に装束を着て、菅笠という墓標をかぶり野に寝る。まるで毎日が死体のようでもある。そこから一歩離れてみれば、昨日の出来事や明日の出来事が遠い遠いことのように感じる。彼岸と此岸。あの世とこの世。

ホテルの5階でボクはその無関係な他者としての自分を見つめていた。

そしてまた雨

そしてまた雨

松山市浅海駅~今治市通町
ホテルポートサイド今治泊

(出費)
・ジョイフル今治大西店
日替ランチ 399円
味噌汁 80円
ドリンクバー 130円
(小計 609円)

・ローソン今治延喜店
アルカリ電池単三2P 289円

・ローソン今治中浜店
助六 398円
エースカップ鶏南蛮そば 195円
ヤマザキ ナイススティック(9P) 179円
UCCカップコーヒー5P 271円
サンスターガムペースト40g 189円
(小計 1232円)

・ホテルポートサイド今治
宿泊代 4400円(朝食込)
洗濯 200円

・自動販売機
ココア 120円
缶コーヒー×2 240円

(合計 7090円)