Category : 28日目

食う、寝る、歩く(28日目の1)

In : 28日目, 菩提の道場, Posted by 田原笠山 on 2008/11/15

アヒルたちの声で起こされる。4時30分起床。テントの中でしばらく動かないでいた。6時前に洗顔、6時10分撤収。6時30分出発。この2時間が長かった。暗い道を歩きたくもなかったし、どうせまた長い1日になるのだろうから、眠れるのなら6時ぐらいまで寝ていたいといつも思っていた。

ボクが目ざめたらアヒルたちはすでに活動を始めていた

ボクが目ざめたらアヒルたちはすでに活動を始めていた


須の川公園はかなり広くて、夕べは気がつかなかったけれど、宇和島側のほうには公園事務所や綺麗なトイレ、反対側にはキャンプサイトがあった。有料。こちらに泊まらなければならなかったのだろう。やはり明るい内にねぐらは探すべき。膝の調子は良くなっている。しかし歯の痛みは増している。痛みから解放されない。もうどこが痛いのかさえ分からなくなっていて、歯も実は痛かったのだけれど膝の痛みで分からなかったのかもしれないと考え始めていた。じゃあ、歯痛が治まると、違う痛み発覚するのか、と。

7時30分、下灘はまゆう会ふれあい広場の東屋にて休憩。昨日買ったパンとチーズかまぼこの朝食。8時10分出発。海岸通りを歩く。海には真珠貝の養殖ブイが浮かんでいる。魚釣りのアベックが魚釣りをしている。日曜日の朝だ。

9時00分、南風ポケットパークにてトイレ。綺麗な公園だ。9時20分、大門バス停にて休憩。缶コーヒーを飲む。9時40分出発。

11時、津島大橋の手前を右折して遍路道に入る。津島町岩松の遍路道はなぜだか分からないのだけれど、少し空気が重かった。「おへんろさん休憩所」というのがその旧道に2か所あるはずなんだけれど、分からなかったし、並んである商店も寂れていた。そういう風景が空気を重くしてるように感じた。天気も下っていっていた。

11時20分国道56号線に戻って、ドラッグサカエで鎮痛剤を買う。持ってきた15回分の鎮痛剤がなくなりつつあった。買っておかないといつ買えるか分からない。軽いものだし持っていれば安心だと思った。ドリンク剤とのど飴も買う。薬局に隣接している桃太郎という食堂に入る。ランチ700円。カレーうどん、からあげ、ライス、サラダ。お腹一杯になった。

12時05分出発。少し行って、手に持っていたTシャツを桃太郎に忘れたことに気がつく、振り返ると店の人がこちらに走って来ていた。「あ、すみません」「いえ、お気をつけて」「はい、ありがとうございます」と挨拶して、また歩き始めた。Tシャツもパンツも洗濯してもひと晩では乾かないので手に持って歩いていた。たまに降ったり、ショルダーハーネスにかけたり…。それでパンツは2枚失くした。道路にパンツが落ちていることは、四国では珍しいことではないのかもしれない。他の地域だと、見ることもないと思うけれど。

12時にサンクス津島店にて買い物。非常食がないと安心できない。国道と言えども何もないところも多い。荷物は少し重くなるけれど、気持ちはかなり軽くなる。寝て食うことができれば、生きられる。簡単なシステムなのだ。文明が複雑にする。それだけのこと。

サンクスを出るとまた歩き始めた。

岩松の文六餅屋さん、おじさんと少し話をしました。

岩松の文六餅屋さん、おじさんと少し話をしました。


獅子文六の奥さんの実家がここ津島町岩松で、小説「てんやわんや」はこの地を舞台にいした作品。これから先、松尾峠遍路道には、へんろ小屋「てんや」と「わんや」がある。ちなみに漫才師獅子てんや・瀬戸わんやも獅子文六と小説から命名したそうだ。



松尾峠遍路道の試練(28日目の2)

In : 28日目, 菩提の道場, Posted by 田原笠山 on 2008/11/15

56号線宇和島市津島町、全長1710メートルの松尾トンネルの上を通るのが松尾峠遍路道だ。トンネル入り口を左折、上ってすぐのところにへんろさん休憩所がある。「てん屋」という名前がつけられたコンクリート造りの立派な小屋だ。13時、その休憩所に着いた。少しだけ休憩。中に入る。泊まるのにはもってこいの場所。中には傷絆創膏やトイレットペーパーなんかが置いていて、「どうぞお使いになって下さい」なんて書かれていた。

雑誌や漫画なんかもあって、その中に少し遍路には不向きな雑誌が開いたまま置いてあった。ヌード写真集(というかえろい系の)で、その写真の少女がこちらを悩ましく見つめていたのだ。「そんなに見つめられても」なんて言いながら、やっぱりペラペラとページをめくってみる。少しドキドキした。いやその写真にというよりも、もしも誰かが入ってきて、かなりHな写真を見ている「本当のお遍路さんよねえ」と言われるような男を目撃されたら。

トレッキング・ザ・空海のパンフレットと写真集

トレッキング・ザ・色海の間違いだろ…と思った


「あ、こんにちは」と言ったあとに、何を言おうか、と考え始めた。それよりもとっとと出て行こうと思った。そして見開きにしたまま、外に出た。外に出て「あ、写真を一枚」と、また中に入って3枚ほど写した。

「きっとあれもお接待なんだろう」と思った。あの小屋に泊まるだろう遍路は90%以上の確立で男だろう。そしてここまでの道のり、すでに1ヵ月、いろいろな欲から遠ざかっている。歩き遍路、そして野宿遍路は欲を捨てていると言っても過言ではないだろう。そこに現れた権化かもしれない。あるいは試されているのかもしれない。その目的のために、そこにいつも置かれているのではないかと思った。

中には使用する人もいるだろうし、それを持ち去る人もいるだろう。それはそれで、また罪を考える機会になるのだろうから…なんて考えていた。そして山道を登っていった。不思議な光景だった。壁に書かれた絵とともにインドの「カーマ・スートラ」を思い出していた。色即是色、空即是空。

13時30分、頂上のへんろ小屋「わん屋」に着く。テントや寝袋を広げて干した。池の畔に幕営してそのまま収納したので湿気ていた。晴れ間が見えていたのだけれど、そうしている間にどんどん曇ってきた。ひとり通り過ぎた。「こんにちは」とだけ挨拶を交わした。13時50分出発。天気が心配になってきた。そのへんろ小屋にあった「宇和島ユースホステルお遍路さんプラン2500円」というパンフレットを頂いた。雨が必ず降るだろうと思った。そう思うとねぐら探しが難しくなる。2500円じゃなくても5000円でも泊まりたかった。

欲望はそこに具現した。

へんろ休憩所「てん屋」の外壁絵

へんろ休憩所「てん屋」の外壁絵。この文字も絵も「カーマ・スートラ」的な連想をしてしまった



宇和島ユースホステル、ユースではないのだけれど(28日目の3)

In : 28日目, 菩提の道場, Posted by 田原笠山 on 2008/11/15

松尾峠遍路道を下って、そして国道56号線に出た。空は雨の重さで弛んでいて、ところどころでそのまま地上に落ちそうになっていた。15時10分、番城小学校前バス停で休憩。56号線からこの道への分岐点が工事中で少し迷った。雨が少し降り出した。15時20分発。少し急ぐ。市街地へ入ってゆくにつれて道が分かりにくかった。

松山まであと100キロ、3日

松山まであと100キロ、3日

宇和島署、馬目木大師、その先を右折、宇和島ユースホステルは地図には矢印で方向だけ書かれているだけで、その場所は載っていなかった。「勧進橋より1.7キロ」、その勧進橋を渡り右折。迷う。そして訊ねる。少し言ってまた訊ねる。と3度ほど繰り返して、その山の麓のタバコ屋さんの公衆電話から電話した。携帯は充電切れだった。

部屋はあるということだった。ただ「剣道大会があって子供がたくさん泊まっていますけれど」と聞いてきたので「かまいません」と答えた。初めてユースホステルに泊まることになる。年齢制限があったり、ミーティングなんてのがあったり、と思っていた。そういうのが面倒で利用したことがなかった。

そのユースホステルは山の中腹にあった。最後は急な坂道を息を切らして登った。16時50分到着。幸いなことに雨は小降りになっていた。そして簡単なチェックインと、袋状になったシーツの使い方、お風呂の時間、休憩室の使い方などを聞いた。今のところはその3人部屋はボクひとりだった。「来ないでくれ」と祈った。

それから販売していたカップうどんとスナックパン8個入り、カロリーメイトの夕食をとった。17時30分だった。18時になると風呂に入った。子供たちは食堂で夕食を食べていた。親を入れて15人ほど。風呂から上がると休憩室のコーヒーを2杯飲んで、それからベッドに横になった。雨が強く降っていた。「ついてる」と思った。雨の日が何日かあったけれど、いつも屋根があるところで眠ることができたし、今日も眠れる。

横になるとすぐに眠くなった。1時間ほど寝た。そしたらオーナーが「相部屋お願いします」と入ってきた。起き上がって同宿の人を迎えた。オーストラリア人のバックパッカーだった。「Hello」と言った。「Oh!ohenrosan」なんて言って掛けていた白衣や菅笠を指差して大げさな喜び方をした。それから少し話して、彼は風呂に行った。ボクはそのまま寝た。戻ってきた彼は電気を消して荷物の整理をしたら、すぐに眠ってしまった。20時まで宿を探しまわったのだろうか。それとも遅くに宇和島に着いたのだろうか。ヒッチハイクや電車、バス、なんでも使っての四国の旅だと言っていた。

イビキが聞こえていた。窓の外は雨音がしていた。ボクはしばらくその両方を聞いていた。そしていつの間にか眠りに落ちていた。

次の朝は晴れたのだけれど…。

次の朝は晴れたのだけれど…。

*愛南町須の川公園~宇和島市内
*宇和島ユースホステル泊

(出費)
・ドラッグサカエ津島町店
EVE20錠入り 498円
ドリンク剤 128円
のど飴 98円
(小計 687円)

・食堂桃太郎
ランチ 700円

・サンクス津島店
ウイダーインゼリー 204円
ほがらかひとくちチョコ 105円
スナックパン8個入り 179円
ニッスイ ジャンボソーセージ 113円
ユーラク ブラックサンダー 31円
(小計 632円)

・宇和島ユースホステル
宿泊代 2500円
カップうどん 150円
(小計 2650円)

・自動販売機
缶コーヒー×2 240円

(合計 4909円)