Category : 26日目

宿毛へ(26日目の1)

In : 26日目, 修行の道場, Posted by 田原笠山 on 2008/11/13

4時50分起床、というよりも「ふれあい市」へ野菜を搬入するひとたちの声で目が覚める。洗顔。そしてコーヒーを飲む。寒い朝だった。

6時テント撤収。もう一杯コーヒーを飲む。少し身体が暖まってきたし、頭もすっきりしてきた。6時50分出発。7時10分、スリーエフ大月店着。お腹が空いていた。昨日は満足に食べていなかった。

スリーエフ大月店のベンチでの朝食

スリーエフ大月店のベンチでの朝食


稲荷寿司3個入り、カップヌードル、ドデカソーセージの朝食。スリーエフの人からペットボトルのお茶のお接待を受ける。「お気をつけて」と送り出されるのは気持ちいい。逆に「またお越しくださいませ」なんて言われると、萎えてしまう…。

外のベンチに座って食べていると、熊本から来たというお姉さん3人に声を掛けていただく。「私たちは朝のフェリーで来たんですよ」と、熊本竹田経由の佐伯宿毛フェリーのことを話してくれた。懐かしい地名がズラリと並んだ。何よりも車のナンバーが懐かしかった。ボクは必要以上のことは言わなかった。話をややこしくしたくなかったし、ご飯を食べることに集中したかった。

お姉さんたちは買い物、それとトイレを済ませたのだろう、揃うとすぐに出発した。「お気をつけて」。そうボクに向かって手を合わせた。彼女たちもまたお遍路だった。「本当のお遍路さんよねえ」と言った。「いや、案外偽者かもしれないですよ」と答えたかった。

月山神社宿毛ルートはその距離の長さから敬遠されてきたそうなのだけれど、NHKの「街道てくてく旅・四国八十八か所を行く」で四元奈生美さんがこちらのルートを通ったことで人気が出たということを聞いた。ちょうどボクが歩き始めた頃に彼女は結願したのだけれど、まだ彼女の熱みたいなものがいたるところにあって、湿っぽくなりそうな遍路というものの表面を少し乾かしているようにも感じた。あの卓球のスタイルをそのまま遍路旅にも持ち込んだ、というような感じの。

それにこのルートは遍路たちにも評判が良かった。これまで泊まってきた道の駅にしても、軒下で寝ることを快諾してくれたし、声を掛けていただく回数も多かった。よく言われる「高知」のイメージとは違うものを感じた。決して高知が悪いというのではなくて、高知の遍路道が民家沿いが少ないように感じたし、何よりも室戸、足摺、延光寺、と遍路ころがしが多いので、遍路たちの心が疲れてしまう、それが土地に対しての、時として憎悪になって表出されるのだろうと思う。修行の場所はそういうものだろと、ボクは思っている。

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竜串、見残しを向く仏足石

竜串、見残しを向く仏足石



魔法の金剛杖を持つ青年(26日の2)

In : 26日目, 修行の道場, Posted by 田原笠山 on 2008/11/13

7時40分にスリーエフ大月店を出発した。しばらくして昨日の青年が病院のベンチに座っているのが見えた。「おはよう」と道路の向こうにいる青年に声を掛けた。なぜ反対側にいるのかは聞かなかった。ベンチ、水、お接待、その3つのワードが浮かんだ。

「おはようございます」と青年は立ち上がると信号のない道路を横断して来た。「どうだった?」訊いた。「ええ、なんか話の好きな人で」「そうそう、オレも叶崎で小一時間話したよ。ま、それでも寒い思いしなくて良かったよ」と言った。それから並んで歩き始めた。彼が今まで受けたお接待のことを少し聞いた。一日に数千円「もらった」こともあるそうで、その時は遍路ツアーのおばさんひとりが「息子に似ている」と1000円お接待すると、別のおばさんも「わたしも」そして「わたしも」と何人かから1000円を頂いたそうだ。

「すごいね」とボクは言って「きっと集団の意識ってのはそんなもんかもね」と話した。彼は「ええ、なんか悪いような気がしました」と言った。彼の遍路旅は札所を巡るのだけれど、納経帳への墨書押印、記帳はしてもらっていないということだった。「スタンプラリー」という表現でその記帳のことを表現していた。

それでも菅笠に金剛杖、白衣という正装をしていた。そのこと、こだわりのようものは別に違和感はなかった。記帳が全てではないのだし、納経はしているのだから。

そのあと、その納経帳が「ヤフオクで売れる」という話をした。そして彼の金剛杖を見て「これはどうした」と訊いた。彼の杖はササクレをそのままして、なんとも異様だった。根が生えてきたようになっていた。「ああ、これ、こうなってしまわないですか」と言ったので「これ、道路に擦ってササクレを取るんだよ」と言った。「ああ、そうなんですか」。

根が生えてきた、魔法の金剛杖

根が生えてきた、魔法の金剛杖


そうなのだ、杖を突いて歩いていると先端がささくれてくる。お大師様の分身なのでナイフで切り落とすなんてことはしないで、道路でやさしく撫でるように削って綺麗にしとくということで、ボクもそうしていた。それをしない彼の杖の先端は根が生えているようにも見えた。

「このほうが自然ですよね」と聞いてきたので「ああ、まあ、そうだね。そのほうが良いかもしれないね、無理に落とすよりは」と答えた。そして話した「それさ、一晩でこういうお姿になりました、なんて言って、この先を悪いところに当てれば病気が治る、なんていけるかもね」と言った。「ええ、詐欺ですよ」と彼は言った。「ま、詐欺というか、しちゃダメだけれど」と言った。それから坊主がいかにスナックでもてるか、なんて話をした。「坊主が縁起物だからね」と言った。そして「今からでも遅くないよ」と言った。

1時間ほどそうやって歩いた。彼のほうが歩くのが早いくてボクに合わせているようだったし、ボクも休憩したかったので「オレ、ここで休憩してそれから行くよ」と言った。「それじゃ、先に行ってます。また宿毛で会うかもしれないですね」と別れた。

宿毛サンライフの前で休憩した。魔法の杖のことを考えていた。「当てればピタリと治る」いるかもなあ…。その青年とは延光寺の手前でもう一度会った。

その青年

その青年

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5つ星へんろ小屋あります(26日目の3)

In : 26日目, 修行の道場, Posted by 田原笠山 on 2008/11/13

宿毛サンライフで休憩していると、自転車のおじさんがやってきて「ここ小筑紫は大関琴光喜の父親の故郷で愛知やトヨタ自動車と関係がある」なんてことを話してくれた。相撲に興味がないボクも、琴光喜やその親方朝潮ぐらいは知っている。朝潮もまた高知の出身だ。土佐の海はその四股名できっと土佐の人だろうとは思ってた。豊ノ島という関取は知らなかった。この人は宿毛出身。

へんろ小屋(しんきん庵大月弘見)

民宿に隣接するへんろ小屋(しんきん庵大月弘見)泊まりにくくないかなあ…。


8時50分出発。
10時20分、扇レストランのところで休憩。違うおじさんが自転車でやってきた。そして今度はいかに宿毛が素晴らしいかを話してくれた。孤独になりがちな歩き遍路には声を掛けていただくことは何よりの接待かもしれない。10時30分出発。

10時40分、道の駅すくもで休憩。10分で着くとは思っていなかった。というかほとんど地図を見ていなかったので、位置関係が曖昧だったのだ。もくもく屋にてうどんを食べる。400円。

この道の駅にあるへんろ小屋は2階建だ。そしてオーシャンビューなので泊まってみたいと思った。薬王寺手前の木岐浜の2階建の小屋とここが「5つ星小屋だなあ」なんて考えていた。木岐では食料がなかったし、宿毛はまだ昼前だし、ついてないなあ、なんて思った。

11時10分出発。11時30分宿毛市内、100円ショップと薬局を探す。シマムラの駐車場で「このへんに100円ショップがあると聞いたのですが」と訊ねたら「ああ、すぐそこですよ」と道を教えていただいた。パルティフジ宿毛店への道だ。

しかしその「すぐそこ」が長かった。車だと5分もあれば着くだろう場所も歩くと20分30分かかってしまう。途中さらに確かめる。「パルティフジへはこの道で良いのですか?」と通りすがった人に訊いた。

12時少し前到着。隣接してあったドラッグササオカにてバンテリン液と栄養ドリンクを買う。バンテリン信奉者のボクとしては、バンテリンが癒してくれるはずだと思っていた。それからダイソーパルティフジ宿毛店に行き、膝サポーター、包帯、身体を拭くシートタオルなんてのを買った。ベンチに座って荷物を整理していたらみかんをいただいた。

12時40分出発。「パルティフジ、なんでもあり」と日記に書いている。マクドナルドもある。ハンバーガーを食べないボクも、なぜだか食べたくなった。食べなかったけれど。そして延光寺に向かった。汗ばんでいた。それほどの天気だった。

5つ星へんろ小屋(宿毛道の駅)

5つ星へんろ小屋(宿毛道の駅)



延光寺(26日目の4)

In : 26日目, 修行の道場, Posted by 田原笠山 on 2008/11/13

延光寺へ向かっていた。松田川沿いの道を歩き新宿毛大橋を渡る。四十番札所観自在寺へは打ち戻って「新」ではない宿毛大橋を渡り宿毛市内を56号線経由か松尾峠経由で向かうことになる。夕方に宿毛市内、どこに泊まろうかと考えていた。膝はバンテリンが効いているのかサポーターが良かったのか、あるいは陽気で暖められたからか、痛みがやわらいでいる気がした。

レストラン鶴亀の手前で二人組のお遍路が来るのが見えた。すぐに分かった。室戸へ向かう10月28日に東洋大師明徳寺で会った初老の男性二人だった。あれから2週間が過ぎていた。ボクは3日停滞した。彼らもまた何かハプニングがあったのだろうか、と思った。

「こんにちは、おひさしぶりです」と声が届く距離になったらたまらず言った。「ああ、えっと、室戸の」「ええ、お久しぶりです。あれから無事にまわられていますか」と言った。

「まあ、ゆっくりだけれど、なんとかねえ」
「そうですか。ボクは膝を痛めて大方で停滞していたんですよ。もうずいぶん先に行かれていると思っていましたから、こうしてお会いできて、驚いています」
「わたしたちもね、雨の日はあまり動かなかったり。それにちょっと疲れてね」と応えてくれた。話をするのはいつも決まっていた。二人の役割は決まっているのだろうと思った。都会、何十年も東京の夜の世界を渡ってきた人たち、というのがボクの印象だった。例えば歌舞伎町のことなら隅から隅まで知っているというような、そんな印象を受けた。友人、というよりも、恋人同士、そんなことを考えていた。

「今日は宿毛泊まりですか」
「ええ、そう。宿にチェックインして、荷物置いてお参りしたから、手ぶらでね。あなたは」
「ボクは、まだ決めてなくて。たぶん宿毛市内になると思いますけど」
なんて話をして「また」と言って別れた。そしてボクは延光寺を目指した。おじさんたちは宿毛市内へ向かった。

同行三人、人はひとりでは生きられない。

同行三人、人はひとりでは生きられない。


そしてしばらくすると、魔法の杖を持つ青年に再会した。「早いね」と言って彼を見ると荷物を持っていなかったので「荷物は?」と訊くと「宿毛駅のコインロッカーに入れてきました。どうせ戻ると思ったので、ちょっと寄り道して」と言った。

「ああ、なるほどね。そこまで考えなかったよ。オレは100均に寄ったけれど」
「そうですか。今からだともう1時間ほどですよ。泊まりは宿毛市内ですか?」
「どうなるかなあ、君は?」
「ボクは、松尾峠を目指して松尾大師の大師堂にと思っているんです。夜景が綺麗だと聞いたもんで」
「なるほど、オレはそこまでは無理かなあ。戻って17時に宿毛市内だもんね」
「そうですね。この時間、ボクでギリギリって感じですもんね」
「そうだね。ま、またそのへんに寝るよ」
「そうですか。それじゃあ、お気をつけて」
と別れた。それ以来会うことはなかった。

それから三十九番延光寺には15時に着いた。15時40分発。山門近くにある民宿に泊まろうかと思った。しかしそのまま宿毛市内を目指した。

延光寺の座禅仏はなにかを語りかけようとしている

延光寺の座禅仏はなにかを語りかけようとしている



同宿あり(26日目の5)

In : 26日目, 修行の道場, Posted by 田原笠山 on 2008/11/13

宿毛大橋を渡る頃には太陽はもうボクと同じ高さにあって、一日をその朱色の句読点で強引に締めくくろうとしていた。あと30分もすれば、またボクはザックのポケットに入れているヘッドライトを取り出す作業を行う。

秋の日は釣瓶落とし

秋の日は釣瓶落とし(宿毛市和田あたり)


留守を預かってもらっているホッチキスと電話でもめた。荷物が届いていて、その不在通知に気付かないまま保管期限が過ぎていたことに対して、ボクは苛立っていた。そのことに対してというよりも、思い通りにならない毎日への不満も「ついでに」そこを出口にした。荷物がどこからなのか、ということが気になり始めた。差出人がまったく知らない企業からだった。千葉県の美浜…。

あとになって分かったことなのだけれど、イオンの懸賞に当たっていて「トップバリュー詰め合せ」が届いていたのだ。差出人が「イオン」ではなくて、発送を担当する企業名だったのでややこしくなっていた。

その怒りや苛立ちを抱えて、夜の宿毛市内を抜けた。与市明の交差点から国道56号線に出た。登り坂。しばらくして宿毛トンネル。抜けるとまた闇だった。18時。晩秋の夕闇は時間よりも深く感じる。もう20時とか21時の感じがした。少し慌てる。この先まったく何があるか分からなかった。地図上には「野地神社」「レストラン樹里」が記されていた。

少し行くと宿毛珊瑚センターというお土産物屋さんだろう店があり、シャッターは下りて人のいる気配もしなかった。その軒下を借りることにした。19時少し前。それから地面に座り込んで夕食を食べた。途中宿毛市内で何か買えばよかったと後悔した。「国道56号線」何かあるだろうと高を括っていた。

スナックスティック9本入りとジャンボソーセージを食べた。自販機が近くにあった。救われた。ボクは、その非常食を食べ終わると、マットに空気を吹き込み、寝袋をその上に広げてもぐり込んだ。川が近いのか山の中なのか寝袋が結露する。冷えているせいもあるのだろう。すぐに眠ってしまった。そして途中何度か起こされた。

2時、目がさめてポリッピーを食べ缶コーヒーを飲んだ。
3時、今度は歯が痛くて目がさめる。ペットボトルのお茶を買って歯磨き。それから鎮痛剤を飲む。膝の次は歯だ。
4時、顔の横でゴソゴソしているので目がさめる。ムカデだ。そのまま起き上がって金剛杖で潰してしまった。殺生。同宿していたのだろうムカデを殺したことへの罪悪感。

同宿あり。地面に寝るということは、そういうことなのだ。

そのまま起きて自販機のそばのベンチに座った。それから撤収を始めた。まだ夜だった。

宿毛市野地あたりから新城山に月

宿毛市野地あたりから新城山に月

*道の駅大月~宿毛市野地宿毛珊瑚センター
*珊瑚センター軒下泊

(出費)
・スリーエフ大月店
イナリ3個 180円
カップヌードル 168円
ドデカソーセージ 118円
スナックスティック9本 179円
ビオレサラシート 263円
(小計 908円)

・道の駅すくも モクモク亭
うどん 400円

・ダイソーパルティフジ宿毛店
液晶カバー(カメラ)
膝サポート
包帯
ペットボトルホルダー
シートタオル
(小計 525円)

・ドラッグササオカ宿毛店
バンテリン液 980円
アリナミン7 140円
(小計 1120円)

・自動販売機
缶コーヒー×3 360円

(合計 3313円)

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