Category : 20日目

浮津の海を見ていた(20日目の1)

In : 20日目, 修行の道場, Posted by 田原笠山 on 2008/11/07

天気予報では「曇りのち雨」だたのだけれど、カーテンの隙間からは海のきらめきが転がりこんでいた。快晴。

6時30分起床。雨だと思っていたので、チェックアウトを10時前と伝えていたし、朝食も8時でお願いしていた。オバマ氏が新しい大統領になることが決まったということを朝のニュースで知った。日本シリーズ巨人・西武線は3勝2敗だそうだ。どれもが全く関係ないことのように思えた。まるで海外にいるように、そこで聞くラジオジャパンのように思えた。

ホテル海坊主から

ホテル海坊主から


7時にもう一度入浴。膝の調子は少し良くなっているように感じた。それでも起き上がる時には勇気を必要とした。そして祈った「痛みが消えてますように」。

調子は良くなっているように感じたのだけれど、それは身体から疲れが少しだけなくなっただけのようだったし、起き上がって左足に体重を乗せると思わず声が出てしまうほど、あるいは痛みは増しているのでもあった。

とりあえず7時30分にパッキング。8時に食堂へ行く。目玉焼き、シラス、かまぼこ、味噌汁、ノリ、という普通の朝食だったけれど、それがなぜだか哀しくもあった。もう少ししたら、また歩き初めなければならない、ということが哀しくさせていた。

8時30分にチェックアウト。「雨が上がって良かったですね」と送り出してくれた。雨のほうが良かった、と思った。そうすればもう一泊することが許されるように思った。

8時50分、上川口郵便局着。ATMが稼働するのを待つ。「もう一泊」出来なかったのは、財布の中身が1000円と少しだったからという理由もあった。カードが使えるとも思わなかった。

9時ちょうどに引き落とす。

わずか30分の時間、これがきつかった。歩き出すと身体の疲労がなくなった分、膝の痛みだけが集中して襲ってきた。指の腹で押していたものが、爪の先になって、次は針の先で押している、ような感じ。歩きたくなかった。その郵便局の前に座り込みたかった。

9時30分、大方遍路小屋着。荷物を下ろした。前の道路は工事中だった。その向こうの海岸は軽やかに輝いていた。それはボクにとっては、かなり残酷な風景でもあった。

国道56号線から伊の岬 晴れ

国道56号線から伊の岬 晴れ



そして海の家へ(20日目の2)

In : 20日目, 修行の道場, Posted by 田原笠山 on 2008/11/07

大方の遍路小屋にいた。
ベンチに寝転がっていた。もう動かないいようと思ったし、動かない方がいいと思った。

遍路小屋に泊まる準備をしなければならなかった。11時、荷物を遍路小屋の柱にワーヤーロックして、道の駅ビオスおおがたに空荷で買い出しに行く。その日と次の日の分の食糧を確保しなければと思っていた。11時35分、道の駅着。

日替わり弁当、おにぎり弁当、餅、芋天を買う。ピーナッツなど非常食もあるからそれぐらいにしておいた。気温も上がっていたので傷みも早いだろうということも考えた。もう少し買っておけば良かったと、あとで思うのだけれど。

浮津海岸、大方遍路小屋下

浮津海岸、大方遍路小屋下


12時に遍路小屋に戻って、それから、荷物を持って海岸に降りた。国道沿いの遍路小屋、そして工事中という状況は居心地が良くなかった。ボクは海岸、そしてその先に見えたキャンプ施設の方へ行こうと、道の駅からの帰り道に考えていた。

12時20分、浮津海水浴場の大方キャンプ場着。海の家はシーズンオフでひっそりとしていた。その前のベンチに座った。少しして工事現場の人たちも弁当を持ってやって来た。そのグループとは別の夫婦、いや男女ペアの内装屋さん、あるいは、大工、左官、とにかく建築関係だろうと思ったふたりがやってきて、弁当を食べ始めた。

そしてボクも古代米おにぎりセットと搗き餅を食べた。金曜日のお昼、海の家はシーズン中のように賑やかになった。

食事が終わると、それぞれ煙草を吸ったり寝転がったりで、短いお昼休みに積極的に身体を休めていた。そして13時前になると、工事現場の人たちは仕事に戻って行った。

内装屋さんだと思った女の人がボクのほうにやって来た。そしてチョコレートとみかんを「お遍路さん、どうぞお食べ下さい」と渡してくれた。「あ、ありがとうございます」とボクは慌てて言った。忘れていた。自分が遍路だということを。

そういうとそのふたりも仕事に戻って行った。

海の家にはまたシーズンオフの寂しさが戻った。

ボクは寝袋やマットなんかを干した。それからただぼんやりと海を見ていた。

大方キャンプ場にて

大方キャンプ場にて



浮津海水浴場の夜(20日目の3)

In : 20日目, 修行の道場, Posted by 田原笠山 on 2008/11/07

その日は暖かかった。秋、晩秋の海も暖かく見えたし、陽気に踊っているようにも思えた。

何もしないまま時間だけが過ぎた。停滞すると決めたら気持ちは少し軽くなった。それでも、天気の良い日に座って海を見ている遍路、その自分に罪悪感を憶えたりもした。それでも時間は確実に流れてゆく。時として全てを取り残してまでも…。

15時になって、ここに泊まることの許可を取らないと、と思い始めた。ちょうど女の人が向こうの道路に見えたので、急いで、そして足の痛みを隠して、「すみません」と近づいていった。

「あの~、ここを管理されている方は、どちらにお住まいなのでしょうか」
「ああ区長さんね、どうしました」
「ここに泊まらせていただきたいと思いまして、代金とかお支払いしたいので…」
「それなら、わたし行って話してくるから、ちょっと待っていればいいわよ」
「あ、そうですか、すみません、遠いのですか」
「ええ、すこしあるからね」
「お願いします」

というような話をしてその奥さんは行ってしまった。

1時間ほどして戻ってきた。
「どうぞお泊まりになって下さい、とのことでしたから」
「お金は」
「お遍路さんからはもらえない、って区長さん言ってましたよ。それにシーズンでもないし」
「ありがとうございます」

と、すこしボクのことやら、これまでの旅のことやらを10分ほど話して、その奥さんは帰って行った。

夕陽が綺麗だった。
そしてなんだか涙が流れてきた。

ボクは海の家の前にテントを張った。屋根が着いている場所だった。これで雨が降っても大丈夫だな、と思った。

17時 日替わり弁当、搗き餅2個の夕食。
何もない夜。寝ているのか寝ていないのか分からない夜。波音の夜。そして哀しみの夜。

浮津海水浴場の夕方向こうが道の駅

浮津海水浴場キャンプ場の夕方 向こうが道の駅

*ホテル海坊主~浮津海水浴場
*浮津海水浴場キャンプ場

(出費)
・道の駅 ビオスおおがた
日替わり弁当 400円
古代米おにぎりセット 250円
芋天 150円
搗き餅4個 200円
(小計 1000円)

・自動販売機
カップコーヒー 100円

合計 1100円