競艇おじさんとミスタースモーク、そして眠れぬ夜なのだ(1日目の4)

In : 1日目, 発心の地, Posted by 田原笠山 on 2008/10/19

上板スポーツ公園1塁側ベンチは、今思えば最高のベッドだった。三面壁、そして広いベンチ、静かな立地、トイレ・水完備、自販機まで徒歩30歩…。そうして四国初夜という不安をゲストたちが和らげてくれた。

弁当を食べて、そしてデザートのイチゴパンを食べ終えたボクは、洗髪をしようかと考えていた。疲れていた身体は重力に逆らえずにベンチに倒れこんでいた。洗髪しようと何度も考えた。考えたのだけれど、面倒でもあった。

しばらくすると、ボクにその最高のベッドを教えてくれたおじさんが、暗闇の中3塁ベースあたりからやってきた。1塁ファールグランドに来ると「さっきのお兄さんかね?」と。

「そうです、どうもありがとうございました。」

とボクは起き上がった。そして立ち上がって挨拶をした。それから1時間ほどいろいろな話をした。おじさんの過去の話が主な話題だったのだけれど…。大阪で暮らしていたというそのおじさんは競艇好きで、トラックの運転手としてかなりの額の収入もあったのだけれど、多くは競艇で消えてしまったことを、ボクに話してくれた。そして予想師の話、予想師になるには3000万円ほどの権利金がいるし、予想もそこそこ当てなければならない話、なんかをしてくれた。

「それじゃあの、お兄ちゃん、気をつけてな」
と、おじさんが帰った。20時を過ぎていた。ボクは、眠かった。

と、しばらくすると「缶はなかった?」と、いきなりお兄さんが訪れた。というか、ボクがそこにお邪魔していたのだけれど…。お兄さんはさらに「缶はなかった?」と聞いてきた。

何のことなのかさっぱりわからないボク。
「缶があったのだけれどなあ」
「……」

お兄さんはベンチの周辺をその「缶」を見つけようと探し回った。その「缶」は少し離れたところにあったらしく、見つけてそしてボクの前のベンチに前にその「缶」を置いて、彼も腰を降ろした。

タバコの吸殻用の缶だった。一斗缶、というのだろうか、食用油や塗料が入っている18リットル缶、その空缶を探していたのだった。そしてお兄さんはタバコを吸い始めた。消した、と思ったら、また吸い始めた。チェーンスモーカー…。

「お遍路さんですか?」
「はい」
「今日はここで泊まるのですか?」
「ええ、泊まらせていただこうと思っています」
「……」

タバコを消す、そしてタバコに火をつける。消す、つける。ベンチにいる間におそらく20本、一箱吸ったのではないのだろうか…。

沈黙。
「どこからですか」
「○○からです」
「ああ、あすこの○○高校は野球強いですね」
「そうですねえ、プロ野球選手もいますし」

野球の話をしばらくした。その間、もちろん、つける消すという、ことを繰り返していた。

「じゃあ、気をつけて」
お兄さんが帰った時には21時を過ぎていた。ボクは、少し苛立っていた。もう来ないでくれ、と思っていたし、たとえ来たとしても「寝たふりをするもんね、もんね、ぜったい、するもんね」と決心していた。

それからは、誰も来なかった。真夜中に、きっと1時か2時にアベックが来てグランドでふざけ合っていたのだけれど、20分ほどしていなくなったけれど、そのことはボクの睡眠を妨げたとしても、ボクが起き上がって会話をするということはなかったので、例えば夢を見ている感じだった。

ボクは、お兄さんが帰ってから(というのも変な表現なんだけれど)、髪を洗った。そしてタオルを濡らして身体を拭いた。身体を拭きながら思っていた。「毛が邪魔だな」と…。陰毛が邪魔、というか、その毛は洗髪できないので、特に不潔になるように感じていた。拭いたとしても地肌までは綺麗にはならないし…。洗おうかと思ったけれど、陰毛を洗っている、それもその部分だけを出して、そんな自分を想像したら……やめた。ボクはホテル上板1塁ベンチのベッドに戻った。

寝袋にもぐり込んだ。23時前だった。とにかくいろいろなことが、いまさっきまで起こりすぎた、と思っていた。そのことがボクの疲労度を増していたように思い出している。

ボクは、深夜のアベックがグラウンドを駈け巡るまで眠りに落ちた。なんとも長い一日だった。少し寒かった。

割れたガラス
金泉寺から大日寺に向かう途中で…。

*一番札所霊山寺~五番札所地蔵寺まで
*上板スポーツ公園泊

*(出費)納経代、お賽銭別
・極楽寺
山菜たきこみごはん400円
よもぎ餅2個170円
・自動販売機
スポーツドリンク2本300円
・スーパーでぐち
鮭弁当500円
イチゴパン140円
アクエリアス104円

(合計)1614円

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