魔法の金剛杖を持つ青年(26日の2)

In : 26日目, 修行の道場, Posted by 田原笠山 on 2008/11/13

7時40分にスリーエフ大月店を出発した。しばらくして昨日の青年が病院のベンチに座っているのが見えた。「おはよう」と道路の向こうにいる青年に声を掛けた。なぜ反対側にいるのかは聞かなかった。ベンチ、水、お接待、その3つのワードが浮かんだ。

「おはようございます」と青年は立ち上がると信号のない道路を横断して来た。「どうだった?」訊いた。「ええ、なんか話の好きな人で」「そうそう、オレも叶崎で小一時間話したよ。ま、それでも寒い思いしなくて良かったよ」と言った。それから並んで歩き始めた。彼が今まで受けたお接待のことを少し聞いた。一日に数千円「もらった」こともあるそうで、その時は遍路ツアーのおばさんひとりが「息子に似ている」と1000円お接待すると、別のおばさんも「わたしも」そして「わたしも」と何人かから1000円を頂いたそうだ。

「すごいね」とボクは言って「きっと集団の意識ってのはそんなもんかもね」と話した。彼は「ええ、なんか悪いような気がしました」と言った。彼の遍路旅は札所を巡るのだけれど、納経帳への墨書押印、記帳はしてもらっていないということだった。「スタンプラリー」という表現でその記帳のことを表現していた。

それでも菅笠に金剛杖、白衣という正装をしていた。そのこと、こだわりのようものは別に違和感はなかった。記帳が全てではないのだし、納経はしているのだから。

そのあと、その納経帳が「ヤフオクで売れる」という話をした。そして彼の金剛杖を見て「これはどうした」と訊いた。彼の杖はササクレをそのままして、なんとも異様だった。根が生えてきたようになっていた。「ああ、これ、こうなってしまわないですか」と言ったので「これ、道路に擦ってササクレを取るんだよ」と言った。「ああ、そうなんですか」。

根が生えてきた、魔法の金剛杖

根が生えてきた、魔法の金剛杖


そうなのだ、杖を突いて歩いていると先端がささくれてくる。お大師様の分身なのでナイフで切り落とすなんてことはしないで、道路でやさしく撫でるように削って綺麗にしとくということで、ボクもそうしていた。それをしない彼の杖の先端は根が生えているようにも見えた。

「このほうが自然ですよね」と聞いてきたので「ああ、まあ、そうだね。そのほうが良いかもしれないね、無理に落とすよりは」と答えた。そして話した「それさ、一晩でこういうお姿になりました、なんて言って、この先を悪いところに当てれば病気が治る、なんていけるかもね」と言った。「ええ、詐欺ですよ」と彼は言った。「ま、詐欺というか、しちゃダメだけれど」と言った。それから坊主がいかにスナックでもてるか、なんて話をした。「坊主が縁起物だからね」と言った。そして「今からでも遅くないよ」と言った。

1時間ほどそうやって歩いた。彼のほうが歩くのが早いくてボクに合わせているようだったし、ボクも休憩したかったので「オレ、ここで休憩してそれから行くよ」と言った。「それじゃ、先に行ってます。また宿毛で会うかもしれないですね」と別れた。

宿毛サンライフの前で休憩した。魔法の杖のことを考えていた。「当てればピタリと治る」いるかもなあ…。その青年とは延光寺の手前でもう一度会った。

その青年

その青年

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