善根ということ(23日目の3)

In : 23日目, 修行の道場, Posted by 田原笠山 on 2008/11/10

津呂善根宿の納め札

津呂善根宿の納め札


17時過ぎに善根宿の主人Kさんがやって来た。なにやら風呂のところで、先ほどの男性と話していた。風呂が炊けてないということらしかった。入浴後に食事という段取りだったのだろう、ボクのところへやって来て「じゃ、風呂の前に、食事に行きますか」と、ご自宅へ案内してくれた。

野菜炒め、ブリの塩焼き、野菜サラダ、そしてご飯だった。Kさんがご自分で作られたということだった。食事中に、少しだけボクのこれまでの遍路の様子を聞かれたので、大まかな行程を話した。そして「どうして遍路に」と訊かれた。

「前から歩いてみたいと思っていたのです。四国や熊野は元気なうちにと思って、失業したこの機会に、と思いまして」ということを初めに話して、さらにもう少し詳しく答えた。仕事のことや、母親のことなども話した。

食事が終わってから、ボクはひとりで善根宿に戻った。そうしたら「風呂に入って下さい」と例の男性が声をかけて下さったので、返事をして浴場へ向かった。横を流れる川の水を汲み上げて、薪で沸かすというものだった。天然水風呂、なのだろう。

ボクが入っている間も、その男性は「湯加減はどうですか」と声をかけてくださった。風呂から上がり、部屋に戻る。ドラム缶ストーブで暖まった部屋にはその男性がいた。「どうもありがとうございました」と言った。

「今日はどこから」
「ドライブイン水車からです」と答えた。それから今日のことを話して「こちらの方なんですか?」と尋ねた。

「あ、私も遍路なんですよ」と答えてくれた。
少し驚いた。ボクの世話をしてくれていたので、てっきりここの人、と言っても、善根宿で生計は立てられないだろうから、近所の人が手伝いに来ているとか、主人の親戚の方とかだろうと考えていた。「そうでしたか。それは失礼しました」と言った。

「いえ、ここに少しお世話になっているもので」と、その遍路氏は言った。もう数周巡わっているそうで、今回は津呂の善根宿に数泊停滞しているということだった。部屋には寝ないでテントに寝起きしていて、こうして遍路の世話をしているとのことだった。その代わりと言ってはなんだけれど、風呂やトイレの設備を使わせてもらっているのだろうと、思った。

宿泊代500円と言っても、それを払ったから客として長居出来るものではないと思う。それに善根宿自体長期滞在する場所でもないのだろうし。500円で管理できるか、というとこれもまた難しい話で、やはり善意、それも見返りを求めない、善が根本にない限り営むことは難しいのだろうと思う。

ボクたちは、人との関わり合いの中で、その人のために行動する時には心のどこかで何かを求めている、場合が多い。それは家族だろうが恋人だろうが、同じことのように思う。無償の愛、それが出来るかというと、とても難しいことのように考えていた。

その遍路氏とそして少し後にやってきて近所の人と3人で21時までいろいろなことを話した。今までプロ遍路たちにはあまり良い印象を持っていなかったのだけれど、その人の物静かな話し方や、けっして自慢しない内容は、聞いていて心地いいものだったし、かなり具体的なアドバイス、たとえば「時間があったら鹿島に渡ってそこのキャンプ場に泊まると良い」なんてことを話してくれた。

そしてその近所の人も、きっと接待ということでテレビもラジオもない善根宿での寂しさを紛らすためにやって来ているのだろうと思った。21時になったら「お開き」になった。ボクも横になりたかった。

ふたりが帰ってしまうと、またいつもの夜がそこにあった。

善根宿のベッドにて

善根宿のベッドにて

*レストラン水車~津呂善根宿
*善根宿泊

(出費)
・スリーエフ下ノ加江店
おにぎり赤飯 125円
たわらむすび弁当 350円
クリームツイスト5個入り 231円
ドデカソーセージ 118円
(小計 824円)

・善根宿
宿泊代 500円
食事代 500円
(小計 1000円)

・自動販売機
缶ココア 120円
缶コーヒー×2 240円

合計 2184円

No comments for this entry yet...

Leave a Reply