そしてヘンロ小屋の夜(7日目の5)

In : 7日目, 発心の地, Posted by 田原笠山 on 2008/10/25

平等寺に着いたのは15時30分ごろだった。おじさんが納経所の横の休憩所にいた。「結局、ふだらく越えで来ました」とボクが言った。「オレもそのつもりだったんだけれどね。どうも途中で違っていると思ったんだけれど…」とおじさんは言った。
地蔵たち

「今日はどこまで?」
「もう少し行って弥谷観音あたりかなあ」
「そうですねえ、今からだとそのあたりで暗くなりますかねえ」
「ま、先に行ってるよ」
「はい」

と、おじさんは準備をしていた。Kさんが納経しているのが見えた。ボクも本堂に行って納経を始めた。終わって休憩所のベンチにいるKさんの隣に座った。「今日は、この辺に?」とKさんが聞いてきた。

「もう少し行ってから」
「この先に善根宿があるそうだよ」
「そうなんですか。どうしようかなあ。宿、取れました?」
「ああ、少し先の『グリーンハウス樹園』ってところ。まだけっこう距離があるんだよね。それでもそこしかないしね」

ボクは地図を広げた。
「10キロですか」
「うん、暗くなるよね。急がないと」
「そうですね。少し距離がありますよね」
「じゃあ、先に行ってるよ。あ、これ、今お接待で頂いたんだけれど、半分に分けたから」
と、5個ほど入ったみかんをわざわざ袋に入れてボクにくれた。
「あ、ありがとうございます」
「うん、じゃあ、また」
と、Kさんは山門に向かっていった。16時。18時に着ければいいけれど、とボクは思っていた。

そしてボクも今夜のねぐらに向かった。決まっていなかったけれど、おじさんが向かった弥谷観音かその手前の釘打トンネルの出口にあるヘンロ小屋が、6キロ先にあった。暗くなるな、と思った。

歩いた。途中、歩いている道がヘンロ道なのか不安になった。地図を持っていて、その通りに歩いているつもりでも、不安になるときがある。道を尋ねた。迷ってはいなかった。暗くなると、それだけで不安になる。国道や車の通りの多い道路だと良いのだけれど、山の中だと更に不安は大きくなる。そうすると時間も長く感じる、歩くのは速くなる、疲労する、良いことは何一つない。

暗くなった道を歩いて、釘打トンネルの入り口近くにあるヘンロ小屋に17時30分に着いた。おじさんがいた。

「居心地良さそうですか?」とボクが言った。
「水もトイレもないんだよね。弥谷観音まで行かなければならないみたいだよ」
「遠いんですかね」
「地図だと1キロほど」
「遠いですね。ボクもここに泊まりますよ」
「それがいいよ」
「食事は?」
「パンを食べた。水がなくてね…」
「あ、ボク2本もっているんで、1本差し上げます。水道水ですけれど」
「良いのかい」
「ええ、1本あれば。それにちょっと弥谷観音まで偵察に行ってきますから、その時に自販機があれば買ってきます」

そしてボクは荷物を置いて、洗面道具だけを持って弥谷観音へ向かった。暗かった。ヘッドライトを持ってこなかったことを後悔した。道路脇に湧き水が勢いよく流れていた。ボクはその水で顔を洗った。ついでに髪も洗った。暖かい季節ならば、そのまま行水をしたら気持ちいいだろうと思っていた。3日ぶりの洗髪だったのだけれど、暗闇で落ち着かなかった。それにおじさんも待っているだろうと思ったので、かなり慌ててそれらのことを済ませた。自販機はなかったし、その水も飲めるかどうかは分からなかった。

ボクは小屋に戻ると、そのことをおじさんに話してから、朝買っていたオニギリを食べた。今日はトータル1000カロリー摂っただろうかなんてことを考えていた。

そして明日、薬王寺を打ったら、室戸まで長い長い道程が待っていることなんかをおじさんと話した。トンネルの入り口は車の音がいつもしていてうるさかった。それでも疲れ果てた身体はトンネルの中でも眠れそうに思えた。そして疲れ果てた身体は、ボクから食欲を含めた全ての欲求を奪うことでバランスを保っていた。長い一日だった。

*ヘンロ小屋勝浦~ヘンロ小屋釘打
*ヘンロ小屋泊

(出費)
・サンクス勝浦町店
おにぎりツナマヨネーズ 105円
おにぎり焼鮭 130円
おにぎりカツオおかか 115円
おにぎり昆布 115円
アサヒ1本満足バー 126円
(小計 591円)

・自動販売機
缶コーヒー 120円
スポーツドリンク 150円

合計 861円

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